私の妹、貴城もかこと“ディーヴァ・モカ”は20世紀の歌姫と称され、その美貌と歌声に勝るものはいないとされている。
でも…私は一年に一度ある家族カラオケ大会で全戦無敗という世間の期待を裏切るような記録を毎年たたき出している。
歌は大好きだし、もちろん。歌えることなら疲れるまでずっと歌っていたい。
でも、私は歌えない。声が出ても、歌を愛していても、悔しくても、生きるためには歌ってはいけない。
──喘息が酷いから。
軽ければいいのだが、一週間に一回以上は発作を起こす。
だから、絶対安静。
先生にも体育は出られないことは伝えてある。
(音楽は選択科目なので、元々専攻していない。)
私の1つ下の妹、もかは、
最初はユーチューブで声だけをアップした。
それだけでたくさんの人がグッドを押した。
再生回数も一日で100、1000、10000と、桁が違うほどのものとなった。
舞桜のスマホをのぞき込む。
圧倒的に妹のほうが可愛い。
でも、歌は絶対に私の方が上手いと思う。
歌いたい。でも、歌えない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。