焔羅様は、私の言葉を聞いたあと、しばらく何も言わなかった。
その赤い瞳がじっと私を見つめていて、沈黙のなかにもどこか、私の心を探るような優しさが滲んでいた。
静かな声だった。
けれどその響きには、はっきりとした拒絶があった。
はっきりと、告げられた。
私が自ら求めた終わりも、ここでは許されない。
焔羅様は少し考え込むように、空を仰ぎ、そしてぽつりと提案した。
そんなことが……許されるのだろうか。
少し目を逸らした焔羅様の曖昧な言い方に、思わず笑いそうになった。
焔羅様が一瞬きょとんとする。
そう言ってそっと彼の手を取ると、焔羅様の瞳が揺れた。
困惑したように、でもどこか安堵したように微笑む。
そのまま、焔羅様は私を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
そして額に優しく口づけを落としてくる。
次の瞬間、私の額に小さな角が再び生えるのがわかった。
屋敷に戻ると、小間使いの双子が、
まるで私たちの帰りを待ち侘びていたかのように、門の前に立っていた。
少しつっけんどんだけど、優しい言葉。そして用意されていた豪華な食卓。
それが、二人の気持ちをすべて物語っていた。
私がそう言うと、焔羅様も心底嬉しそうに微笑んだ。
こうして、鬼神様とその愛弟子、そして奇妙な屋敷の仲間たちの暮らしが、また始まった。
私たちの賑やかな笑い声が、屋敷に響いていた。
——終わり——


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。