昔は少し気にしていたこの傷も、
今では“弐”さんと会えたきっかけにもなっているから嫌いじゃない
私は自分の腹当たりをさすりながら話を始める
私は自分の身の上話をした
よく、自分の辛い過去を人に話すと泣いてしまうという人がいるが
私は全く泣かなかった。泣けなかった
両親が狂った原因もそれだ
元々普通な人達だった。私が全く泣かない。笑わない。喋らない。子供だったから
初めての育児なのにそんな子供が生まれてさぞかし不安だっただろう。
その上事故も事件も引き寄せるだなんて
そりゃ殺したくもなる
私がそんなことを考えているとずっと黙っていた“弐”さんが口を開けた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!