康二くんが玄関を開けて
元気よく「ただいまー!」と言った
蓮もふっかもそれが普通のように
ただいまと言って入っていく
「ただいま」
私も言ったが
違和感だらけで消えそうな声がボソッとでた
辰哉「なに?」
それに気づいてふっかがニヤニヤしながら聞いてくる
「た、ただいまっ」
私の声が入口から響くと
リビングのドアが開いて
ひょこっと顔がでてきた
亮平「誰の声?」
辰哉「おう、あべちゃん」
またふっかはこちらをニヤニヤしながら見る
「ただいま。あべちゃん」
そう言うとあべちゃんは目を見開いた
亮平「え?!」
それから口元を隠し
すごく驚いた顔をする
亮平「今、なんて言ったの」
「ただいま」
亮平「違う、その後」
「あべちゃん」
そう言うと彼はすごく嬉しそうに微笑んだ
亮平「無理してない?」
「してないよ。ありがとう」
康二「あなた?手ぇ洗いやー?」
奥から康二くんの声がした
「はーい」
いつの間にかふっかもいなくて
2人きりで微笑みあった
亮平「あなたのそんな顔が見れて嬉しいよ」
「あべちゃんが引き抜いてくれたおかげだね」
そう言って洗面所へ向かった
辰哉「お、なんだ。もういいの?」
「ニヤニヤしすぎ」
洗面所でばったり会ったふっかにそう言うと
どこからか笑い声が聞こえてくる
この家は常にどこからが気配がする
でもこちらは気を張る必要がなくて
それがなんだか心地いい
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。