誰かの気配を感じて
緩めてた気を張る
ラウ「俺だよ。そんな怖がらないでよ」
両手を上げて廊下から現れたのは
ラウールさん
いや、ラウールくん?
ラウ「あ、呼び方?呼び捨てで呼んでよ」
「なんで今」
ラウ「人がなんか考えてるの当てるの好きなんだ」
ふふふと可愛く笑った
「敵だと嫌なタイプ」
私がそう言うと
言い返すと思っていなかったのか
ラウールの顔がバッと上がった
「心を開いてない訳じゃないの」
そう言うと嬉しそうに笑った
ラウ「俺今日学校がんばろー!」
コトンと目の前に朝食が置かれる
涼太「どうぞ」
ラウ「いただきます!」
「いただきます」
彼につられて言うと
涼太が優しく笑った
「今までこんな美味しい料理に手をつけなくてごめんなさい」
涼太「気にしてないよ。今美味しく食べてくれてるならよかった」
私が謝ると涼太はまた微笑んで言った
ラウ「あれ?なんだこれ」
隣を見ると綺麗に繋がっている人参
絶対に私が切ったやつだ
「すみません。私が切ったものかと・・・」
ラウ「あなたちゃん料理は苦手なんだね」
不器用に切り刻まれた人参を
美味しそうに食べるラウールを見て
なんだか心があたたかくなった
「そのうち上達します」
ラウ「楽しみにしておくね」
ラウールと小さな約束を交わして
学校へ送り出した
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。