体が起こされて
お粥がのったスプーンが口に近づく
反射的にぐっと口を閉じると
彼はため息を吐いた
翔太「これで俺が死んだら食べなくていいよ」
パクッとお粥を食べて
翔太「うわっ、うま・・・」
と呟いた
「貴方が死ななくても食べません」
翔太「お前人に名前呼ばせといてそれかよ」
食べ物のことを言われるのかと思いきや
彼が思うのは違うことらしい
翔太「俺翔太。」
スプーンで自分を指してそう言う
翔太「あ、ちょっと待って」
彼はスプーンを置いて
私に背中を向けて耳に手を当て会話をし始めた
翔太「え?俺が言うの?阿部が言えよ」
恐らく内線だろう
翔太「あー、わかった」
くるっと私の方を向いて
それから
翔太「お前、もう死んでるんだって?」
と言った
「そういうことにしてあるそうです」
翔太「ふーん、じゃあもう前の組織は関係ないじゃん。ルールなんて守んなくてよくね?」
「ペナルティは痛くて辛いらしいです」
翔太「戻れるわけないじゃん。俺たちの組織に入っちゃったんだから。最低限は守ってやるよ」
そう言って彼は私にまたお粥を差し出した
翔太「ん!」
私はそのお粥をそっと食べた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。