ボーッと天井を見ていたら
コンコンとドアがノックされた
翔太「よ」
ひょこっと顔を出したのは翔太
手にはご飯
翔太「夕飯」
ことんとサイドテーブルに置かれる
翔太「また毒味してやろうか?」
そう言って意地悪そうに笑う
この人は間違いなくサドスティックだ
「1口もあげない」
お箸でご飯を食べると
満足そうにニヤニヤ
わかりやすい人
翔太「うまい?」
「うん」
すぐ返事をしたらぐははと笑った
大胆な笑い方だなぁなんて釣られて私も笑う
翔太「俺の幼馴染がつくった料理」
あたかも自分が作ったかのように自慢する
ほんとおかしい人
翔太「本当は料理人になれるはずなんだけどなー」
陰に隠れてしまったら
もう二度と光の射す方へは戻れない
この社会にいる限りは
どんな理由であれ入ってしまったらもう出口はない
翔太「俺のせいで巻き込んじゃったの。だせぇよなー」
「彼はなんか言ったの?」
翔太「涼太?」
「うん」
翔太「怖くて聞けない」
彼はそう言って力なく笑った
「1口あげる」
翔太「まじ?」
なんだか調子が狂ったので
とりあえず私の大好きなハンバーグを1口あげた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!