璃夢くんのせいで、普段真面目な私が人生初の遅刻をしてしまった。
彼には...誠心誠意、謝ってもらおう。
というか、今度一切近づかないでいただこう。
...よし。
私は、ただ平凡に暮らせればそれでいいんだから。
私のこの生活を邪魔するようなやつとは、関わらないのが一番。
...ずっと守ってきた、私の小さなお城。
深く立ち入ることは、誰も許されていなくて。
踏み入れれば、崩れ落ちてしまう。
言ってしまえば、これはただの心の壁なのかもしれない。
...この後輩、とりあえず要注意。
『...もしかして、普段真面目なあんたが遅刻してきたのって、あの後輩くん絡み?』
一時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴り、親友(?)の沙樹が、一目散に駆け寄ってきた。
...さすが、私の親友は鋭い。
「...なわけあるかーい。」
『...私に嘘をつくとは、100年早いんじゃないの??』
「...はい、すみませんでした。」
この親友、やっぱ怖い。
『優等生真里ちゃんに、一体何があったのさ』
「...なぜか、うちの前で待ち伏せてて。
聞きたいことがありすぎて、色々聞いてたら、時間やばかった。以上。」
『簡潔すぎてなんも伝わってない。』
「...ほんと、なんなんだろ、あの後輩。
...もっと、色々探らないと。」
─────私がこぼしたこの一言が、沙樹を奮い立たせる原動力になるなんて、思いもしなかった。
『...この後輩なら、真里を救えるかもしれない...
心にある大きな壁を、壊せるかもしれない...』
「...ごめん、なんか言ってた?」
『...ううん、独り言。』
...この時の私は、沙樹の言葉に耳を傾けていなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。