京都府宇治市にある小さな喫茶店。
その名も宇治喫茶。
宇治喫茶は、1人の女性が経営しているお店。
町外れにあるので、お店に入店する者は少ないのですが、とある1人の男性は宇治喫茶の常連客。
1ヶ月に1回は宇治喫茶に訪れます。
そんな宇治喫茶を経営している女性と、常連客の男性を覗いてみましょう。
私は欠伸を一つし、店内のカーテンを開ける。
ここは私が経営している"宇治喫茶"。
町外れにあるから、お客さんはほぼ来ないけど、たまたま通った方たちは、足を運んでくれることが多い。
お客さんが少ないからこそ、おもてなしはしっかりとする。
それが私のモットーなのだ。
鼻歌を歌いながら、テーブルを除菌する。
割とお客さんをもてなす準備の時間が、楽しかったりする。
テーブルを綺麗に拭き、テーブルクロスを掛け…やることは沢山あるけど、その分お店が美しくなるのはやはり、見ていて気持ちがいい。
今日もお客さんの為に、美しく。
心の中で私はガッツポーズをする。
毎日行っている作業だが、今日はなんだかいつもより店内が綺麗に輝いて見える。
回数を重ねることで掃除の技術も格段と上がったか…?なんてちょっと調子に乗る。
恐らく私の思い違いだと思うが、ちょっとくらいならそう思うのも悪くないかも。
これが、今後私のモチベーションに繋がるならそれでいいから。
なんて独り言を呟きながら、緑茶を注ぐ。
宇治市なだけあって、喫茶店と言っても緑茶や抹茶などを出している。
お客さんが居ない時、開店前、閉店後など私が1人の時でも、お茶を飲むことが多い。
毎日開店前は、緑茶を飲んで、今日の調子を伺う。
今日は割と、調子がいいかもしれない。
小さなマグカップを揺らして、一息つく。
1口飲むと、香ばしい緑茶の味。
私の一番お気に入りの味なのだ。
緑茶以外にも、麦茶や煎茶、抹茶などを飲む時もある。
温かいお茶を飲むと、夏でも心も身体も暖まる。
ペチッ
顔を2回、両手でペチペチと優しく叩く。
身体の余分な物が全て抜けていくような、そんな不思議な気持ちになる。
それに、頬が痛むから目が覚める。
そして、私は緑茶を一気にゴクッと飲み干す。
まだ底の方は熱が残っていたのか、結構熱かった。
猫舌の私は、舌が焼けるまではいかなかったが、むせってしまった。
相変わらず自分のドジさに苦笑しながら、食器を洗うために席を立つ。
急に今までの記憶がぶっ飛んだか?なんて思う。
でも、たまにはこういう朝があってもいいかも。
なんて思ったのは、心の隅っこに置いておこう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。