第5話

36
2020/08/16 03:00
ピックで刺したわらび餅を口の中に運ぶ。
噛めば噛むほど甘みが増してくる。
しかし、甘みの中にも抹茶の苦味がしっかりと入っており、絶妙なバランスを保っている。
これは今まで食べたわらび餅の中でも上位に来るほど美味しい。
光輔
あ、あの!
香織 左
はい?どうさせました?
光輔
このわらび餅、とっても美味しいです!!
僕が美味しさを店員さんに伝えると、店員さんは少し顔を赤らめてニコッと笑った。
そして、こう続けた。
香織 左
ありがとうございます、わらび餅は私の得意料理なんです
光輔
だからこんなにも美味しいんですね!
僕はテンションが上がり、思ったことを口にすると、店員さんは首を振り、謙虚そうに笑った。
本当なのにな、なんて言いたいけど僕は心の中に留めておくことにした。
そして、またわらび餅を食べ始めた。
光輔
やっぱり美味しい
店員さんには聞こえないように、小さな声で呟いた。
これ、機嫌悪い時に出されたら機嫌直っちゃうな、なんて冗談を思いがら。
そして、わらび餅を食べていた手を一旦止め、次はグリーンティーを飲むことにした。
光輔
あ、すっきりしてて美味しい!
美味しくて、ついつい大きな声を出してしまった。
店員さんにもきっと聞かれているだろう、と恥ずかしげに思い、店員さんの方を見てみた。
香織 左
そうですか?気に入って頂けて嬉しいです
店員さんはそう言うと、作業の続きをし始めた。
案の定店員さんには僕の声は届いていたけれど、美味しいという思いが伝わったならそれでいい。
僕はわらび餅とグリーンティーを食べたり飲んだりしながら、幸せに浸った。
光輔
美味しかったです!
また来ますね!
香織 左
それはそれは、ありがとうございます
またのご来店お待ちしております
店員さんに別れを告げて、店の外へ出る。
さっきまでの余韻に浸りながら、ふらりふらりと道路を歩く。
お会計を済ませた後、あのお店を気に入った僕は、店員さんと写真を撮らせていただいた。
光輔
これは思い出の1枚だ
少し足を止め、カメラを眺める。
そこにはさっきの店員さんと僕の笑顔の写真が。
また京都に来る機会があれば、絶対に来ようと思っている。
光輔
確か、宇治喫茶っていう名前だったような
光輔
ホテル帰ったら調べてみよう
口コミを見ると色んな人の意見を見ることが出来るから便利。
絶対評判良いんだろうな。
でも、全然お客さんが居なかったのが不思議なところ。
そこも調べたら出てくるのかな、なんて色々考えながら、僕はホテルへと向かうことにした。

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