第8話

28
2020/08/19 03:00
龍斗
ありがとうございました
ありがとうございました、美味しかったです!
香織
それはそれは、誠に光栄です、またのご来店お待ちしております
私は頭を深深と下げ、2人組を見送る。
2人組の姿を見届けると私は頭を上げ、一息つく。
お会計の際、恋人同士なのか聞いたところ、恋人同士だったらしい。
彼女さんが昔から行きたかったのが、私の経営している宇治喫茶だったとのこと。
それを聞いた時はびっくりしたな。
香織
まさか私のお店昔から行きたいって言ってくれてたとは
世の中には色んな人が居るもんだな、と改めて感心する。
食事も楽しそうにしていらしたから、良かった。
これからも、お客さんに笑顔になって貰えるようなお店、おもてなしをしていきたいと心の底から思った。
香織
でも、特に気にならなかったんよな
そうは言え、私にはまだ疑問が残っている。
何故今日1番最初に来てくださった男性の事が気になっているのか。
先程の2人組には何も感じなかったのか。
これは私の、今日最大の疑問になっている。
写真を撮ってもらっていいですか、と聞かれた時に普通の人とは何かが違う、というのを確信した。
しかし、私はあの男性が入店した時から気になっていた。
香織
まぁ考えてても分からんよな
私は考えるのをやめ、仕事に集中することににした。




あれから2週間後、私はあの男性に弟子入りを迫られた。
光輔 左
僕に、弟子入りさせて下さい!!
香織
え、えぇ?
あの不思議な男性に、突然弟子入りを頼まれてしまった。
初めて来ていただいた日の2日後にも、あの男性は来て下さった。
その時から、このお店を気に入ってくれたのかな、なんて思っていた。
1週間で2回も来てくれる方なんて、私のお店ではまず珍しい。
光輔 左
貴方のお店をすごく気に入ったんです
光輔 左
僕、すごく喫茶店巡りがすごく好きで、色んな喫茶店を巡っていたんですけど…
光輔 左
今まで行った中で、貴方のお店が1番良くて
光輔 左
料理はもちろん、外装や内装までら拘ってあって…とても惹き込まれました
男性は、つらつらと言葉を並べる。
それを私は、唖然となって見て聞いているだけ。
こんなに褒められても、ただただ照れるだけなんだけどな…。
しかし男性の熱意はすごく、私の目を見て話しているにも関わらず、表情全体までは見ていないのか、私の困った表情に気づかないでいる。
光輔 左
それにっ、
香織
す、ストップ!!
光輔 左
え?
これ以上喋られたらまずいと思った私は、なんとか男性を止めることができた。
というか、評論家なった方がいいと思うねんけどな…
その語彙力一体どこから湧いているのか。
香織
あ、あのですね…
私は一息ついてから、冷静に喋り始めた。

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