私は頭を深深と下げ、2人組を見送る。
2人組の姿を見届けると私は頭を上げ、一息つく。
お会計の際、恋人同士なのか聞いたところ、恋人同士だったらしい。
彼女さんが昔から行きたかったのが、私の経営している宇治喫茶だったとのこと。
それを聞いた時はびっくりしたな。
世の中には色んな人が居るもんだな、と改めて感心する。
食事も楽しそうにしていらしたから、良かった。
これからも、お客さんに笑顔になって貰えるようなお店、おもてなしをしていきたいと心の底から思った。
そうは言え、私にはまだ疑問が残っている。
何故今日1番最初に来てくださった男性の事が気になっているのか。
先程の2人組には何も感じなかったのか。
これは私の、今日最大の疑問になっている。
写真を撮ってもらっていいですか、と聞かれた時に普通の人とは何かが違う、というのを確信した。
しかし、私はあの男性が入店した時から気になっていた。
私は考えるのをやめ、仕事に集中することににした。
あれから2週間後、私はあの男性に弟子入りを迫られた。
あの不思議な男性に、突然弟子入りを頼まれてしまった。
初めて来ていただいた日の2日後にも、あの男性は来て下さった。
その時から、このお店を気に入ってくれたのかな、なんて思っていた。
1週間で2回も来てくれる方なんて、私のお店ではまず珍しい。
男性は、つらつらと言葉を並べる。
それを私は、唖然となって見て聞いているだけ。
こんなに褒められても、ただただ照れるだけなんだけどな…。
しかし男性の熱意はすごく、私の目を見て話しているにも関わらず、表情全体までは見ていないのか、私の困った表情に気づかないでいる。
これ以上喋られたらまずいと思った私は、なんとか男性を止めることができた。
というか、評論家なった方がいいと思うねんけどな…
その語彙力一体どこから湧いているのか。
私は一息ついてから、冷静に喋り始めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。