第4話

59
2020/08/15 03:00
カランコロン
入口に着いているベルが軽快な音を鳴らす。
誰かお客さんが来店したのだと思い、入口の方に視線を向けると、1人の男性が立っていた。
光輔 左
あ、営業中…ですよね?
香織
はい!そうです!
男性は少し不安そうな顔をして、尋ねてきた。
私は間髪入れずに、答えてしまった。
すると男性は案の定少し目を見開いて不思議そうな表情になった。
変な人だと思われてしまったようだ…。
香織
あ、お席案内致しますね
光輔 左
はい
何とか平然を装って対応することができた。
私は男性をカウンター席へと誘導した。
カウンター席に男性が座り、お品書きに手を伸ばす。
お品書きを開くなり、またまた不思議そうな表情へと変わっていった。
私はさっきからどうしたのだろう…と思っていたが、気づかないフリをして続けた。
香織
ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください
光輔 左
あ、はい、分かりました
ぺこりと一礼をして、私は奥の部屋へと進んで行った。
香織
なーんか不思議な人やなぁ…
奥の部屋に入室し、一言漏らす。
今まで来店して下さったお客さんは、特に思うことは無かった。
ただ、今回のあの男性は何か不思議なオーラを放っていた…気がしただけかもしれない。
でも、何か他の人とは違う気がした。
香織
頼むもので何か分かるかも…しれへんなぁ…
オーソドックスな物を頼むのか、普通の人が頼まないものを頼むのか…気になるところだ。
なんて考えを巡らしていたら、声が聞こえた。
光輔 左
すみませーん
香織
あ、はい!!
私は急いで扉を開け、男性の待つ部屋へと戻って行った。
香織
ご注文は?
光輔 左
えーと、この
グリーンティーと抹茶わらび餅で
香織
グリーンティーと抹茶わらび餅、おひとつずつですね?
光輔 左
はい、お願いします
私は、かしこまりましたと一礼をし、カウンターで料理を作る。
抹茶わらび餅とグリーンティーという少し珍しい組み合わせにびっくりしているが、彼が好きな組み合わせなのだろうか。
それとも、気になっただけなのだろうか。
なんて考えが頭の中を巡る。
考え事をしていると、ふと声が聞こえた。
光輔 左
あの、このお店って貴方だけで経営されているのですか?
香織
あっ、はい、私一人でやっています
突然掛かった声に、少し焦ったが落ち着いて対応することが出来たはず。
それにしても、なんでそんな事を聞くのだろう、と純粋な疑問が浮かんだ。
その後の男性の表情もなんだか意味深だったし。
香織
お待たせしました、抹茶わらび餅とグリーンティーです
光輔 左
ありがとうございます
香織
ごゆっくりお召し上がりください
完成した品物を男性の前に置く。
両方抹茶なので、見た目は緑の主張が激しいが、味は全然違って美味しいはず。
男性はピックを手に持ち、わらび餅に刺した。

プリ小説オーディオドラマ