第11話

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2020/08/22 03:00
あれから1週間、僕は香織さんに教えて貰った行為を毎日練習していた。
1週間後の今、東京の自宅にいるが、もうここは今日から自宅ではなくなる。
そう、僕は引越しを決めていたのだ。
以前香織さんと話した際も言っていたけど、本気であの喫茶店で働きたいと思っているから、京都へ引っ越すことに決定した。
光輔
空っぽだ…
丁度、30分前くらいに、引越し業者さんが来て下った。
改めてこの部屋を眺めると、案外広かったんだと感じる。
家具を色々置いていたから、圧迫していたのかな。
光輔
香織さん、今どうしてるだろうな
香織さんの連絡先を知らない僕は、今彼女が何をしているかが、全く分からない。
早く京都に引っ越して、あの喫茶店にちょっとでも顔を出したい。
そう強い思いが、込み上げてくる。
光輔
あとちょっとの辛抱だから、我慢しよ光輔
そうやって、自分に言い聞かせる。
やるからにはちゃんとやる主義の僕は、毎日欠かさず教えて貰った事をしていた。
次会った時に、凄い!って言って貰えるように。





カランコロン
もう既に聞き慣れてしまった、入口のベルが軽快な音を鳴らす。
僕は彼女を見つけて、少し微笑んだ。
僕の存在に気付いた彼女は、僕同様微笑んでくれた。
僕は早足で、彼女の元へ駆け寄った。
光輔
お久しぶりです!
香織 左
お久しぶりです、光輔さん
光輔
長らく教えて貰ってませんけど、ちゃんと覚えてますよ!
僕は自信満々に香織さんに言った。
おぉ!凄いですね!という反応を期待していた。
香織 左
あら、それは凄いですね
だが、そこまで驚きもしないで、微笑んで褒めてくださっただけだった。
でもらそこが香織さんっぽくて僕は満足した。
そんな事を思っているが、今回からまた気を引き締めて修行に取り組む。
香織 左
それでは、制服に着替えてきて下さい
光輔
はい、分かりました!
僕は威勢の良い返事をして、更衣室へと足を運んだ。
香織 左
今回お教えするのは、料理についてです
光輔
おぉ…
一人ぐらしだから、自炊はちゃんと毎日やっているけど、スイーツ…というか、わらび餅などは作ったことがないから、少し不安。
その思いが顔に出ていたのか、香織さんが僕の肩をトントンと優しく叩いた。
光輔
え?
香織 左
不安な顔をされていますが、大丈夫ですよ、慣れたら簡単ですから
光輔
…はい、頑張ります!
僕は香織さんから元気を貰い、真剣に取り組む気力を取り戻した。
何だか、香織さんは人を笑顔に出来るパワーを持っている気がする。
教え方も分かりやすいし、出来たら自分の事のように喜んでくれるし、改めて今までの事を思い返してみると、僕は香織さんに頼ってばかりだな、と痛感した。
それでも、嫌そうな顔ひとつ見せず、丁寧に教えてくれるから、甘えてしまうのかも。
これからは、自分でちゃんとできるように努力しよう。

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