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2018/03/05

第9話

最後の

小学校からアパートまでの道は大体覚えていたので、最寄り駅にも容易く辿り着いた。

時刻表を見ると、どうやら次の電車は三十分後のようだ。暖色の明かりが点いている 待合室に入り、暗闇に包まれた街を眺める。高校にも電車で通っていたのだが、こんなふうに意識して景色を見るのは 初めてだった。

さざなみの音。明かりのついた家屋。海辺にそびえ立つ洒落たホテル。
都会の喧騒からも、そばにいるだけで心臓が高鳴る相手からも離れ、ようやく落ち着いた気分になれた。

「…ふぅ」

木の温もりが伝わってくる椅子に腰掛け、ひとつ息を吐き、瞼を落とす。
不思議と涙は出てこなかった。後悔もしてないない。

ただ、心から何かが抜け落ちてしまったかのような感覚が、僕を責め立てる。
虚無感とでも言えばいいのだろうか。

数少ない友人を失うのは心苦しいが、僕にとっては友人のようで“友人”ではない。あえて名前をつけるなら“好きな人”だ。

好きな人の幸せすら祝福できないのは、僕が狭量だからなのだろうか。それとも、誰もがそういうものなのか。
本当に好きだからこそ、誰にも奪われたくないと思ってしまう。幸せになるなら、自分の隣で幸せになってほしいとさえ。

愛というのは温かくも美しくもあり、時折 醜く 誰かの自由を奪ってしまうものなのかもしれない。