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2018/03/04

第6話


「…園田、今日ペース早くない?」
「そう…かな。まぁ、嬉しいんだよ。…久しぶりに会えて」

“酔う”というのは怖いもので、無意識のうちに、そんなことを口走ってしまう。
ぼうっとした意識の中、つまみに手を伸ばすと
ちょうど肘が 缶ビールに当たり、テーブルの上に水たまりを作った。

「あ…」
「あーあ。…もう、少し水飲めよ」

急いで布巾でビールを拭い始める男は、呆れたように笑ってそう言う。

「…ごめん」

天衣は布巾を持ってキッチンへ行き、冷蔵庫からミネラルウォーターを持ってきてくれる。
差し出されたペットボトルを受け取る瞬間、指先が彼の手に触れた。たったそれだけの事で、心臓は音を立てる。

「どうかした?」
「いや、別に。…ありがとう」

それと同時に、意識しているのは自分だけだと思い知らされた。
そんなこと分かっていたはずなのに、どうしてこうも胸が痛むのか。

「…園田はさ、好きな人とかいないの?」
「何だよ…突然」
「そういえば 園田のそういう話、聞いたことないなと思って」

そりゃそうだろう。
まさか自分が恋愛対象として見られているなんて、思いもしないはずだ。そもそも 僕がゲイであることすら、彼は知らないのだから。

「一応、いる…かな」

そんな返事をしてしまったのは、酔っていたからなのだろうか。
それとも、僕の心の内を 彼に知ってもらいたかったからなのか。

「…でも、もうダメなんだ」
「ダメ?」
「うん。気持ちを伝えるのが、…遅かったみたい」

本当は、そういう問題ではない。
気持ちを伝えずとも、答えは自ずと分かる。

「そんな…気持ち伝えるのに遅いとか早いとか、そういうのないんじゃない?大事なのは…相手の気持ちなわけだし」
「僕の一方的な片思いだよ。それに、相手が今更 僕になびくとも思わない」
「そうやって最初から何でも決めつけるなよ。園田のそういうとこ、良くないと思う」
「…決めつけるしか、ないだろ」

何も知らない天衣が憎い。
それと同時に、愛しくてたまらない。

「僕は、…ずっと君のことが好きだったんだよ」

どうせこうして飲むのも今日で最後だ。
全てを酔いのせいにしてしまえばいい。