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2018/03/05

第7話

友達

“好き”という言葉は、口に出してしまえば随分と簡単なもので、今まで言えずにいたことが不思議なくらいだった。
でも、顔が見れない。そこにあるのが 侮蔑の表情だとしたら、僕はここから逃げ出すしかないだろう。

「…え?本気で言ってる?」
「冗談でこんなこと言わないよ」
「そう…だよな。…ごめん」

十八でこの街を出て、自分と同じ世界にいる人と出会い、天衣のことを忘れるために 何度か男に抱かれた。
でも、忘れようとすればするほど、彼のことで僕の心が埋め尽くされていくようだった。

「…だから言っただろ。決めつけるしかないって」
「ごめん…」
「謝らないでよ。…最初から分かってたことだ」
「でも、俺は園田のこといい友達だと思ってるし…さ。これからも こうして飲んだり…」
「悪いけど、それは無理」
「え…?」
「もう友達になんて戻れない。僕は、君と一緒にいると…苦しくて堪らないんだ」

感情を吐露すると、思わず泣きそうになる。
逃げるように 椅子から立ち上がり、荷物を持ってリビングを出た。聞こえてくる男の声も無視して、靴を履く。

「待って…ちゃんと話そう!」
「僕は…もう話すことなんてない」
「俺だって、園田のことは大事だと思ってる!」
「…でも、一番じゃないだろ」
「おい!」

彼は鍵も閉めずに、部屋を出た僕の後をついてくる。
そうやって有耶無耶にしないところも、“友達”を大事にするところも。やっぱり好きだと思った。
手の甲で涙を拭いながら 階段を降り、少し歩いたところで腕を掴まれた。

「…離してよ」
「ちゃんとこっち見ろ」

唇を噛み締め、後ろを振り返る。
天衣の顔が涙で滲まないよう、何度も瞬きをして、じっとその顔を見上げた。

「俺は…お前を失うなんて考えられない。告白されて…驚いたけど、でも嫌とかじゃなくて」
「…気を遣わなくていいよ」
「そうじゃない!恋愛対象としてじゃないけど、園田のことは好きだよ。なのに、俺はお前の友達ですらいられないのかよ?」
「天衣は何も知らないから、そんなことが言えるんだよ」

傷つけたいわけじゃないのに、困らせたくもないのに、溢れる想いは止まらない。

「…今まで僕がどんな気持ちだったかなんて、考えたこともないだろ?十年以上 片思いし続けて、それでも 君のそばにいられれば良いと思ってた。それなのに…結婚なんて 祝福できるはずない」

どうして僕は男なんだろう。
もしも女として生まれてきていたら、一度くらい天衣の恋人になれたかもしれないのに。

「友達の幸せを喜んでやれない“友達”なんて、友達じゃないだろ」

気持ちを伝えなければ、ずっと隣で笑えていただろうか。
心を殺して、笑っていただろうか。

「…離してくれ」

そんな惨めな思いをするくらないなら、何もかも壊してしまった方がマシだ。

僕らの関係も、この脆い心も。