第5話

部屋
165
2018/03/03 10:49

「へぇ。年下かぁ…」
「うん。まぁ、元々店の手伝いしてくれてた子だから、出会って八年くらいかな」
「…ふーん。というか、僕が家行って大丈夫なの?」
「ちょうど陽子(ハルコ)も旅行いってるんだよ。高校時代の友達なんだってさ」
「そっか」

帰る途中で寄った スーパーで酒を買い、天衣の家に着いたのは西日が眩しくなる頃のことだった。

「どうぞ」
「…お邪魔します」

決して新しくはないアパート。
部屋の中は女性と住んでいるだけあって、かなり綺麗だ。

「適当に座って」

スーパーの袋から缶ビールやらおつまみやらを取り出しながら、天衣はそう言う。
荷物を部屋の隅に置いて、僕は彼の斜め前に座った。

「ビールでいいよな?」
「うん」

部屋の所々にある“女性らしさ”に、思わず目を背けたくなる。
いつかこういう日が来ると分かっていたはずなのに、どうしてこうも受け入れられないのだろう。

「じゃ…乾杯」

江戸切子に焼酎を注いでそう言う彼は、何も知らない。

「…乾杯」

アルミ缶とガラスがぶつかる音が、あまりに小さくて 少し鼻の奥がツンとした。



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