第41話

私ばっかり サナ
6,750
2021/04/16 12:13








付き合い始めて一年。初めてあなたと喧嘩した









きっかけはサナの一言だと思う。









サナ
サナ
なぁ、なんで最近構ってくれへんの
あなた
ん〜...ちょっと仕事が忙しいんだよね




わかってる。









あなたは新企画のリーダーを任されたらしくて、









ただでさえ仕事量が多かったのに上乗せされたんやもん。









サナからしたらあんな量過労死してもおかしくない量や。









それは分かってたんやけど...








唯一、唯一二人で楽しく話ができる夕飯の時間さえも、









仕事にあなたを取られた






サナ
サナ
食事の時くらい仕事せんでもええやん




ちょっと言い方きつかったやろか









でもそうでも言わんとあなたはやめへんし









そんなことを考えながら食事を進める。








あなた
ごめんね...明日までに終わらせないとだから
サナ
サナ
...なんでサナばっかりこんな我慢せなあかんの?
あなた
え?
サナ
サナ
仕事ばっかで構ってもらえへん!
サナばっかり抱き着いたり、ちゅーしたいんかなって耐えられへん!
あなた
私だってそりゃできるもんならしたいよ...
サナ
サナ
せやったらすればええやん!
サナ
サナ
サナばっかり我慢して...あなたは寂しくないん!?





1度開けば閉まらない口









止めようと思っても止まらない。









段々あなたの顔が険しくなっているのを知っているのに止められない。









少し言葉に詰まってしまえば主導権はあなたへ






あなた
さっきから自分なんなん。
ばっかりばっかりって
サナ
サナ
でも実際...



でも実際そうやろ!と言おうとした瞬間









あなたがバンッと仕事の資料を床に叩きつけた





あなた
私やって我慢してんねん。
いくらサナといちゃつきたいからって仕事放り出したらあかんやろ
あなた
できることなら仕事なんて放り出して四六時中サナに引っ付いてたいわ
あなた
あんま大きい声じゃ言えんけどああいうこともしたいと思ってんねん!
あなた
それでも仕事任された以上は責任があるやろ!?





そこまで言った後、しばらく肩で息をしていたあなたは一言ごめんと言って叩きつけた資料を片付け始めた。









それから残りの食事を全て平らげて









美味しかったよ、ありがとう









そう言って部屋へ戻っていってしまった。






サナ
サナ
はぁ...何やってんねやろ自分...

















そう呟けば静かになった部屋に涙が込上げる















































それからしばらくして、あなたの新企画は大成功を収めたということを人伝に聞いた。









あれから私たちの間は微妙な空気が漂い、









「行ってきます」「行ってらっしゃい」









「ただいま」「おかえり」









それ以外の会話はなかった。









もう終わりなんかな...









そう思えば堪えていたものが溢れ出しそうになる









机の引き出しからアルバムを取り出し、開いてみれば幸せそうなあなたの顔









いつからこの顔みてないんやろ...









小さくため息をついてアルバムを閉じる。









と同時に扉が開く音。






あなた
サナ...ちょっといい?
サナ
サナ
......ん...じゃあ、ココア入れてくるな
サナ
サナ
そこ座って待っとって





キッチンへ向かう間、久しぶりに話せた喜びと何を話されるのかという不安が襲った









久しぶりに聞いたあなたの声はやっぱり心地がいい。









そこで好きだなぁと改めて確認するものの、









もう聞けなくなるのかなという不安。









そんなことを考えながらココアを入れていればお湯をこぼしてしまった。









指を火傷してしまって、水道水で冷やしていると









後ろから優しく抱きしめられて、火傷した指にひんやりとした感覚









何が起きたのかわからなくて固まっていると





あなた
...火傷?
サナ
サナ
うん...
あなた
私が入れるから、これ持って先戻ってて



そう言って離れてしまう。









あぁ...と残念に感じながらも言われた通りにする。









渡された保冷剤を見ると少し汚い字で









「ごめんね」









そのごめんねがどういう意味なのか。









私には到底理解できなかった。










ただ、もしそういう意味であるなら...









部屋で待っていればゆっくり開くドア





あなた
ごめん、遅くなっちゃった
サナ
サナ
ううん、大丈夫



そう言って私の目の前に座る。









全ての動作が目に付いてしまう。









指先からつま先まで全ての動きが目に入ってくるのに。









耳からは何も入ってこない。









あなたが口を動かした瞬間、心臓が飛び跳ねる







あなた
...ごめんね





何が?









そう聞きたいけれど、その先が怖くて。









口が震えて上手く言葉にできない









頑張っても声が出ない









いつの間にか涙が滝のように出ていたようで、









あなたが焦ったようにハンカチを優しく当ててくれる









その優しさにまた涙してしまう






あなた
ごめんね、なんで泣いてるのか分かってないんだけど...
サナ
サナ
......あなたがっ....優しく...するっ...から......
あなた
...褒められてるってことでいいの?笑
サナ
サナ
褒めてなんかない...





少し落ち着いてきて









やっと喋れる程度になった唇を動かして聞いてみる。





サナ
サナ
その...ごめんねって、どういう意味なん?
あなた
...?ごめんねはごめんねじゃ...ない?
サナ
サナ
そういうことやなくて
サナ
サナ
.....別れたい...ってことなん...?





そう聞くや否や、あなたの顔が驚いた顔のまま固まっている









あまりに綺麗に固まるから私も同じように固まってしまって









指がピクッと動いたと思ったらすごい勢いで肩を掴まれる






あなた
え、待って?別れるなんて...
別れるなんて全くもって考えてない!
サナ
サナ
へ...?
あなた
私はこの前酷いこと言ってごめんねって意味でごめんねって言ったんだよ!?
サナ
サナ
え...じゃあサナの勘違い...?




顔を上げればまだ少しぼやけている視界にはあなたの焦って困っている顔









しばらくその状態でいるとあなたが笑い出す






サナ
サナ
な、なんで笑うん!?
あなた
いや...なんか可愛くて...笑笑
サナ
サナ
かわっ...なんなん?!笑
あなた
サナも笑ってんじゃん笑




二人で笑い出すとなかなか止まらない









止まらなかったのが涙から笑いに変わるだけで









こんなに安心するものなんやな









二人で肩で息をしているとまたあなたが口を開く




あなた
私はサナと別れる気なんてサラサラないよ
サナ
サナ
そんなんサナもやし...
あなた
勝手に早とちりした可愛子さんは誰なんだろ
サナ
サナ
...あなたのばか...不意打ちじゃなくてしっかり言ってや...///






そう言うとまた少し驚いたような顔でサナを見つめてくる









あなたの綺麗な瞳に囚われていると両頬が温かいもので包まれる





あなた
好きだよ。大好き。これから先も愛してる。




てっきり可愛いって言ってくれるんやと思ってたのに









急に愛してるなんて...ほんまあなたはずるい









不意打ちすぎる愛してるに固まっているサナを見て








あなたが笑いながら可愛いなんて言ってくるから









悔しい。



















チュッ










あなた
っ!?///
サナ
サナ
...変な顔やな笑
あなた
...うっさいわ...///




































私ばっかりこんなあなたを見てええんやろか













ダメだなんて言わせへんけど!!



































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