今日も、変わらない日常にあの子の姿を探してる。
朝から、ずっと。登校中の通学路に、移動中の廊下に、帰宅中の歩道に。その後ろ姿を気付くと探してしまう。
出会ってもう…何年経ったか、覚えてはいない。あの頃からずっと私は大事な事も言えずに。
こんなに苦しいのも、何年抱えているのか。
壊したくないから。私の一言で無邪気に笑うその姿も、そのまま全て私の胸の中に閉じ込めてしまいたくて。
このままこの関係が変わらないことだけを望んで、言いたい事も言えない臆病な人間。
意気地無しだって何度笑われたことか。そのからかいすらも愛しくて。
隙あらば恋話を始める所も嫌いじゃない。
いや、本当は嫌いだけど。
そんなことを言ってしまったら悲しませてしまいそうで。
恋してる顔なんて、君の前でしかしない。できない。
こんなにそばにいれるのも、きっと私が好きだなんて言ったら夢の中に消えてしまいそうだから。
私が君のことを好きだなんて、君は知らなくていい。
何も知らないままでいい。私のそばで笑ってくれたら、それで。
君が私から離れていくまでは、この関係を壊したくないから。
時折偶然を装って、一緒に夕焼けの世界を歩いたりして。
気になる映画の話。気になる音楽の話。気になるあの子の話。
耳を塞ぎたくなるようなことも、笑顔で聞いた。
休みの日には映画を見に行って、一緒に帰る道は同じ音楽を聞いて、朝の歩道は私の知らない人の話を聞いて。
友人としてでも、君の日常に溶け込める事が私の幸せだから。
好きな人が好きな人と喧嘩して、その後疎遠になって。
好きな人が悲しくなって少し落ち込んだりしてるのに、心のどこかで喜んでしまっている。
喧嘩して離れても、好きな人に向ける君の矢印が私に向く事はないって分かってるのに。
誰かに思いを寄せる事がこんなに切ないなんて、初めて知った。
ほら、もう分かりきってる。
それなら私でいいじゃないか、君にふさわしいのは私なんだよ。
そう言ってしまえばいいのに、臆病な私は何も言えない。この関係性に安心しきっているから。
この言葉を言えば、きっと君は冗談と言って困ったように笑うのが目に見えてるから。
困らせたくない。困らせたくないんだよ。
私の気持ちなんて気付く事もなく、他の誰かと幸せになって、その幸せの共有をしたいと思える相手に私を選んでくれたら、それでいい。
もう何回同じ季節を君と過ごしたのか。
何度も同じ季節を、同じ気持ちで、同じ立ち位置で、前へ進むことも後ろに下がることもできない。
好きだから言えない。好きだから言わない。
君が好きだから、私はここにいるままでいい。
どんなに切なくても、どんなに辛いとしても。
君が好きだから。
言えない。
深夜の勢いで書いたので愚作ですごめんね
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!