ゆっくり病室の扉を開け、声をかける。
そこには、はじめのママがいた。
はじめママは意外にも落ち着いた様子だった。
シルクもはじめが記憶をなくしてる事を気にしているからか少し動きや声が硬い。
こんなはじめを見てると悲しくて、辛くて。
言葉にならないよ。
シルクは、はじめにニコッとした笑顔でそう言った。
すると
はじめママが、顔をハンカチでおさえ、泣きそうな声でそう言いながら病室を出ていった。
首を傾げて、深く考えているはじめ。
私はわざと明るい声で、はじめにスマホを向けた。
はじめしゃちょーの動画を。
はじめしゃちょーを知らないはじめに。
思い出すかもしれないと思った。
でも、
そう簡単には行かなかった。
それだけは、思い出して欲しかった。
はじめの自分の力で思い出して欲しかった。
なのに…
驚いた顔のはじめ。
真顔だけどどこか悲しげなシルク。
そして、上手く息ができない私。
どうしたらいいんだろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。