第13話

君を知らない君へ。
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2018/10/13 06:37
あなた

はじめぇ…?

ゆっくり病室の扉を開け、声をかける。
そこには、はじめのママがいた。
はじめママ
あ…あなたちゃん。
はじめママは意外にも落ち着いた様子だった。
はじめママ
それにシルクロードさん?
シルク
はい。
シルクもはじめが記憶をなくしてる事を気にしているからか少し動きや声が硬い。
はじめ
あ、あなたさん!と…そちらは?
シルク
シルク…ロード。
はじめ
シルク…ロード?ハーフ?
ハーフじゃなさそうだけど…
僕の友達?
あなた

…はじめ…。

こんなはじめを見てると悲しくて、辛くて。
言葉にならないよ。
シルク
俺は、はじめと同じ事務所の後輩ですよ。
シルクは、はじめにニコッとした笑顔でそう言った。
はじめ
事務所…?
すると
はじめママ
ちょっと…ごめんなさい…
はじめママが、顔をハンカチでおさえ、泣きそうな声でそう言いながら病室を出ていった。
はじめ
うーん。事務所って僕は、アイドルとか芸能人だったとか…?
首を傾げて、深く考えているはじめ。
シルク
はじめ…
あなた

ほら!コレがはじめだよ。

私はわざと明るい声で、はじめにスマホを向けた。
はじめしゃちょーの動画を。
はじめしゃちょーを知らないはじめに。
思い出すかもしれないと思った。
はじめ
僕は、動画配信者…なのか。
馬鹿なことやってるな。
でも、
そう簡単には行かなかった。
はじめ
僕がこのはじめ…しゃちょー?
ってことは分かった!
また1つ思い出せたっ。
あと、シルク…ロードくん?が後輩ってことも!
シルク
はじめ
それと…こうくると、あなたさんも、動画配信者だったり?
あなた

シルク
はじめ…あなたは。
シルク
あなたは、はじめの奥さんだよ。
あなた

ちょっ、シルク?!

それだけは、思い出して欲しかった。
はじめの自分の力で思い出して欲しかった。
なのに…
はじめ
?!
驚いた顔のはじめ。
真顔だけどどこか悲しげなシルク。
そして、上手く息ができない私。
どうしたらいいんだろう。

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