どれくらいの時間がたっただろうか。
外はもう黄金色に染まってる。
ちょうど、私が事故にあった時間帯。
後悔だけが、私に降り注ぐ。
何度溜息をついただろう。
すると…
私は、思わずはじめの方を向いた。
一瞬にして涙腺崩壊。
今までにない以上に、涙が出てきた。
声も。
顔も。
身体も。
仕草も。
喋り方も。
はじめのはずなのに。
なんで?
私はそう訴えかけ続けた。
さん?
なんで「さん」をつけるんだろう?
はじめはベッドの上に座ったまま、病室を見回す。
そして、名前の書かれたプレートをみて。
と言いながら、首を傾げた。
身を乗り出すようにはじめに必死に訴えた。
でも…はじめは…
え?
「キス」もして、
「ハグ」もした。
「結婚」というラインも通過して、
「同棲」もしてるのに、
「5年間」も一緒にいるのに、
はじめのその一言が、
私の心を。
もう戻らないくらい
ぐちゃぐちゃに。
5年間一緒につくった思い出を。
パズルを崩すかのように
バラバラに。
共に育んできた愛と絆を。
踏み潰すように
粉々に。
私の涙を。
泥沼に吐き捨てるように
乱雑に。
私の愛。
いや私 全てを。
手でちぎるように
無残に消した。
耐えられなくなった私は…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!