第55話

白。
320
2020/04/29 02:00
@あなたside---------------
遠くで水の流れる音がする。
それ以外何の音もしない。
私は、静かに息を吸った。
まるで、心臓の鼓動までも誰かに聞かれているようだった。
なぜかそれくらい緊張感があって、不安もあった。
どうしてだろう。
こんなに近くにいるのに、あの人が愛おしい。
その感情は、少しずつカタチを変えている。
はじめ
出たよ~
思考を遮るように、後ろから声がした。
あなた

頭びちょびちょ!ちゃんと拭いてよ~もう…!

私は彼の首にかけてあった白いタオルで、撫でるように彼の頭を拭いてあげた。
はじめ
ふふ、ありがとうございます♪
ご機嫌な彼は、少し悲しそうに笑った。
@はじめsideーーーーーーーーーーーーーーー
ただ真っ白い天井を見つめ続ける。
起き上がって、ゆっくりとカーテンを少し開ける。
そこには、星と夜景の光が数え切れないほど散らばっていた。
僕は、この世界の中の一人の人間。
でも僕はYouTuberで、奥さんもいて。
なんて幸せ者なんだ、周りに恵まれすぎている。
でも…
今はその記憶がない。
どうして心の中がこんなに寂しさでいっぱいなんだろう。
強く、申し訳ないという気持ちが浮き上がってくる。
どうあがいても、どう頑張っても。
思い出せなかった。
それは、僕にとっても酷く悲しくて。
無力さを感じた。
僕にできること、今、僕にできること。
何もできないのは、気持ちが悪い。
@幽霊はじめside---------------
はじめ
おやすみ。
あなた

うん、おやすみ。

あなたがベッドサイドのライトを消した途端に小さな恐怖感が訪れた。
このままどこかに沈んで、溺れて、何もかもが白紙に戻ってしまう。
そんな気がしてならなかった。
あなたは不安じゃないかな。
ひとつ同じベッドで横になる小さな背中を見つめて、俺は心を読んだ。

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