第56話

長い夜。
306
2020/04/30 04:00
@あなたsideーーーーーーーーーーーーーーー
長い夜ほど嫌いだ。
悲しい。
寂しい。
苦しい。
怖い。
そんなマイナスな考えだけが、簡単に浮かんでくる。
考えれば考えるほど、わからなくなって。
不確かなものになっていく。
はじめに背を向けて、横になってしまった。
はじめはこれからどうなるんだろうか。
ちゃんと自分の体に戻れるのだろうか。
桜和ちゃんをしっかり面倒見て、無事に親御さんのところへ返せるだろうか。
もしずっとこのままだったら、私はどうすればいいのか。
これからも、生きていけるだろうか。
愛してもらえる存在で、居続けられるだろうか。
はじめ
あなた、こっちむいて。
優しい声がした。
はじめ
今…暗いこと考えてたでしょ…?
私は背を向けたまま静かに涙を落した。
@幽霊はじめsideーーーーーーーーーーーーーーー
小さな背中が小さく揺れている。
はじめ
泣いてるの…?
あなた

な、泣いてないよ、ただ…

彼女はそこで口を閉ざした。
鼻声で、泣いているのはバレバレだっていうのに。
はじめ
ほら、こっち来なよ。
あなた

嫌だ…

はじめ
なんで?
あなた

私はいつも、はじめに助けてもらってばっかりだから。

あなた

ずるいよ、私。
私は、はじめのこと助けてあげられてない。

あなたの心の中は真っ黒なベールに包まれたようだった。
はじめ
そんなことないよ。
はじめ
あなたはいつも一生懸命で…
あなた

でもすぐ諦める…

はじめ
友達を大事に思ってて…
あなた

でもやってることぜんぶ空回り…

はじめ
気が利いて…
あなた

でも…

"ギシッ"
俺は後ろからあなたを優しく抱きしめた。
はじめ
俺はどんなあなたも、みんな好きなの。
甘いシャンプーの匂いが体中に流れるように香る。

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