『あ~肩こる~』
会場を出て首を回しながら化粧室に向かう。
こういう大人数のパーティーって
何回来てもなかなか慣れない
「なんで恭平様はあんな子を主人に選んだのかしら?」
化粧室に続くコーナーを曲がろうとした瞬間、
そんな声が中から聞こえて足を止める。
「♠なんて数える程しかいないのに」
「そんな優秀な方があんなガサツそうな子に仕えるなんて…」
はいはいそうですねー
どうせ私はガサツですよ
そんな陰口今まで散々言われてるっての。
「でもあの子も相当な富豪らしいし、
意外と恭平様もお金になびいたんじゃない?」
「あぁ、そうかもね?笑」
え…
「なんだかんだ言って執事も人間だし、
お金には目がくらむのかしらね~笑」
『ちょっと待ちなよ』
私が突然現れて、一瞬狼狽えたお嬢様2人
「な…なによ!?盗み聞きしてたわけ!?」
『あんたたちの声がデカいだけ』
多分年は私より2、3個上かな
「なによ…風磨様が執事だからって
調子に乗るんじゃないわよ!」
開き直って好き放題言う化粧の濃いお嬢様。
こんなお嬢様たち、私が執事だったら絶対イヤ
『私のことは何とでも言えばいいよ。
でも恭平の悪口言っていいのは私だけだから』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。