『…どーしよ』
化粧室の一番奥の個室の柱に
頭の上で両腕を紐で縛られて身動きがとれない。
私のドレスはさっきの2人によって
なんとも無惨な姿に変わってしまっていて、
胸元はバッサリ破かれてスパンコールも所々落ちてる。
ああいうお嬢様たちはずる賢いのがお決まりで
化粧室前には清掃中の看板を立てて行ったから
ここには誰も来てくれない。
『本番もうすぐじゃん…』
確かに降格しろとか言ったけどさ、
こんな形を望んでたわけじゃないよ…
『…ごめんなさい』
恭平「それ俺に向かって言ってんの?」
『…え?』
独り言のつもりだったのに
視線を上げればそこには私を見下ろす恭平
『え、な、なんで』
恭平「モモに感謝しろよ」
『モモちゃん…?』
よく見ると、恭平の足元から
ひょこっと顔を出しているモモちゃんに気付く。
恭平「お前がここ入るの見たんだって。
あと女ふたりがコソコソ出てくるとこも」
『そっか…ありがとねモモちゃん』
モモ「あなただいじょーぶ?」
『うん、平気だよ!…あ、』
ドレスは平気…ではないよね
『ごめん恭平、足引っ張って』
恭平「諦めるにはまだ早いだろ」
『だってもう本番始まるじゃんっ…』
恭平は私のドレスをしばらく見定めた後、
モモちゃんに何か耳打ちをした。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。