今日もいつもと変わりなく
噴水はサラサラと規則正しく水音を鳴らしてる。
「にゃー」
『げ、』
噴水の淵に腰掛けていると
どこからともなく現れた白いふぁさふぁさ
私に構うことなく
いつもの定位置なのであろう場所にしゃがむ。
『……お母さん待ってるの?』
「……」
『…なんとか言いなさいよ、性悪』
「……にゃぁ」
お、鳴いた
と思ったのも束の間。
それ以降は私も猫もなにも言わずに
しばらくずっとその場に居続けた。
今日の空は快晴で、お日様の光が暖かい。
噴水の周りには菊の花が綺麗に咲いていて
ピンクのエゾギクが顔を見せている。
『…なんだっけ、これの花言葉』
……………
「にゃー」
恭平「おまえ今日は噴水じゃねーの?」
厨房で夕飯の仕込みをしていたら
鳴きながら足元にくっついてきた。
「にゃぁっ」
恭平「?」
かと思えばすぐに離れて行って、
なんかいつもと様子が違う気がして
後をついて行くことにした。
「にゃぁ~」
恭平「…そういうことね」
辿り着いたのは中庭の噴水で、
目の前には噴水の淵に上半身を預けて
気持ち良さそうに寝てる俺の主。
恭平「まるで猫だな」
起こさないようにそっと抱き上げて
屋敷へ向かおうとした。
『ん……おかあ…さん』
歩き出そうとした瞬間
腕の中のあなたがそんな寝言を言って、
顔を見れば優しく微笑んでいる。
恭平「…夢ん中で会えたの?」
もう少しその夢が続いてくれるように、
目の前に広がる菊を一輪摘んで
俺はゆっくりと屋敷へ向かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。