第79話

星降る夜

完っ全に遊ばれている。
こんなことなら言うんじゃなかった……とむくれてそっぽを向いていると、ポスッ。頭頂部に重みのある物が降ってくる。それが先生の手だと気付くまで、そう時間はかからなかった。

私はぽかんとして先生を見上げる。
不死川 実弥
不死川 実弥
俺も、頑張り屋な雪流が大好きだぜェ。
雪流 あなた
?!!

心臓が、跳ねて。息が、止まって。どきどき。ドキドキ。どんどん鼓動が駆け足になっていく。

顔を真っ赤にして立ち尽くす私を他所に、先生は “してやったり” みたいな笑みを浮かべてさっさと歩いていってしまう。

少しずつ遠くなる背中。
星空の下、揺れる白銀の髪がくるりと振り返ってひと言。
不死川 実弥
不死川 実弥
俺だけドキッとさせられてたまるかっつの。
雪流 あなた
〜〜〜〜!

両手で熱くなった頰を押さえる。
冷えた指先がジンと痺れるほど、熱い。

爪先に力を入れて、地面を蹴った。
先生の背中に追いつき軽く肩でどつく。
不死川 実弥
不死川 実弥
痛って。うわ折れた。DVだDV
雪流 あなた
どこがドメスティックだ。他人だろが。
不死川 実弥
不死川 実弥
あ? 水くせェこと言うなよ俺たちの仲だろ
雪流 あなた
語弊しかない言い方しないでくれますか、不死川せんせー

ピンと張り詰めた冷たい春の空気を、私たちの笑い声が揺らす。ある日の星降る夜の出来事。照らす月明かり。

アスファルトに、凸凹の影が伸びている。