第77話

ベリーライク

多くの人に支えられ、助けられて、ここにいることができる。それがどんなに、幸せなことか。

キメツ学園の人たちは皆優しくて、蜜璃ちゃんとしのぶちゃんは一番最初に声を掛けてくれて友達になった。

先生たちも優しく、時に厳しく、愛情をもって指導してくれる。

この学園の先生たちは、理事長先生の芯に真っ直ぐ通ってるものを全員が受け継いでいるのだと、見ていて思う。

形は違えど想いは皆同じ。キメツ学園に通う子供たちの行く末が、どうか明るく輝かしい未来でありますようにと日々力を尽くしてくれている。

 そして──不死川先生。
 私にとってかけがえのない存在だ。
雪流 あなた
こうして先生に話を聞いてもらえること、全然嫌なんかじゃない。以前の私は、大人の人に心配されるのはイコール迷惑をかけているのだと思ってた。けど………今は違う。話した分だけ心が軽くなっていくみたい。こんな気持ちは初めて。

先生と、ただの生徒。
大勢の内のひとりとひとり。

普通ならば何事もなく通り過ぎていくはずの出会いのなかで、先生は私を気に留めてくれた。それが先生の正義なのだとしても、私は心の底から嬉しかった。
雪流 あなた
私、先生ことが大好き。お店、迎えに来てくれてすごく嬉しかった。気にかけてくれて本当にありがとう。

およそ三十センチ上にある先生の顔を見上げると、ちょうど電灯の光が真後ろにあって表情がよく分からなかった。

なかなか返答が返って来ず、軽々しく大好きだなんて言わない方がよかったかな……と今更しても遅い後悔をして視線を下げる。

いや、軽い気持ちじゃないし。
ちゃんと大好きだし。

 え待ってちゃんと大好きって何?
 やっぱ私とんでもないこと言った?
 言ったよね、もうほぼ告白だよね。
 いや前に好きって言っちゃったけどさ。
雪流 あなた
あの、えと違う、違うの。私、適度な人間関係の構築とかまだよく分かんなくて、本音と建前の使い分けが下手くそで………あっでも今のは本音! いや、かと言ってそういう意味の好きではないといったら違うかもしれなくもなくもないけど………!

ものすごい早口で言い訳をまくしたてる。
別に私そんなんじゃないし!と言い聞かせながら。
雪流 あなた
ベリーライクですよ!?

直後、プッと吹き出す声。
えっ笑われた……と思い再度先生を見上げる。

今度はちゃんと見えた。
先生の表情。
笑ってる。
smileじゃなくてlaughのほう。

眉とまつ毛の位置を遠くして、眦をキュ、と結んで。口元は朗らかな逆三角形。補習中に小さく微笑するのは見たことあったけど全然違う。こんなに楽しげな笑顔、初めて見た。