第75話

力になりたかった。

私が勝手に働き始めたことを知ったお爺ちゃんは怒りに怒って、入院中だというのに病院を飛び出して家に帰ってきた。

バイト先に提出しなければならない保護者サインが、お爺ちゃんが書いた物ではないと店長さんが気付き、連絡がいってしまったのだ。

近所の字の上手い大学生に頼み込んで書いてもらったのだが、考えが甘かった。私はとことん、浅はかな人間だった。
お爺ちゃん
自分が何をしたか分かっとるのか!!!
雪流 あなた
分かってるよ! 分かっているけど力になりたかったんだよ! これ以上迷惑かけたくない、負担になりたくない、いつまでもお荷物でいるのは嫌なの! お爺ちゃんだって本当は私なんかいなくなった方が楽だって思うでしょ!!!

バチンッ──……!という音に横っ面をはたかれた。頰に鋭い痛みが走る。ああ、私はビンタをされたのだと遅れて理解した。
お爺ちゃん
こンの、石頭の大馬鹿者!!! 子供に子供らしく学び遊び食べ寝て幸せに笑っとって欲しいと願って何が悪い!!! 娘がいなくなって喜ぶ親などいる訳なかろうが!!!

お爺ちゃんは泣いていた。
おっきな瞳からビー玉のような涙をばたばたと溢して泣いていた。私を『娘』と──そう、呼んでくれた。
雪流 あなた
お爺ちゃんの涙を見たのは後にも先にも、あの日だけで。それで……ようやく、目が覚めて