第69話

堕姫さん

『スナック釈迦』

私のバイト先はキメツ町の南側、小規模な商店街の裏側に位置している。

スナックのオーナー(私達は皆ママさんと呼んでいるが実は男性だ。女装が趣味らしい。)と理事長先生は切っても切れぬ縁らしい。

理事長先生から事情を聞いたママさんは嫌な顔ひとつせずに私を雇ってくれた。

「今生では徳積みまくって絶対極楽行くって決めてんのよアタシ。地獄だけはもうマジ勘弁だわ。拷問辛すぎ」だそうだ。ちょっと何を言ってるか分からない。

従業員のお姉さん方は見た目こそ派手で強めだが、話してみると皆気さくで優しい人だ。

看板娘の墮姫さんもキメツ学園に通っていて、バーテン兼ボーイのお兄さんとは実の兄妹だと聞いた。
私と境遇同じく生活費のために力を合わせて働いている。
本名の梅さんと呼ぶと烈火のごとくキレる。

謝花 梅(墮姫)
あなた〜

その梅さ………墮姫さんにだ。
バイト終わりの閉店作業中に声を掛けられた。

艷やかなドレスを脱ぎ下さい私服に戻った墮姫さんは年相応可愛らしさで美少女という言葉がよく似合う。
酒瓶片手に煙草咥えてるけど。
雪流 あなた
墮姫さんお疲れ様です。謝花先輩なら空いたボトル片してくるってさっき裏に………
謝花 梅(墮姫)
ん〜ん、私はあなたに用があるの。
雪流 あなた
? 何かありましたか?

怪訝そうな面持ちで首を傾げる私をよそに、堕姫さんの表情は楽しげだ。形のいい唇がにんまり弧を描く。燻らせた紫煙の下。頰のタトゥーが美しくわらっている。
謝花 梅(墮姫)
不死川よ、し・な・ず・が・わ。あんたたちデキてんの?

ボンッ!!!
焼けた鉄球を水面にブチこんだみたいな音がした。大量に煙もでた。もちろん比喩だが本当にそんな気がした。私の身体中の血液が顔に集まり一気に赤面したせいだった。



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雨沙璃
雨沙璃
ちょっと諸事情で日記はあなたちゃんが卒業するまでお休みさせてもらいます。
完結したらまとめて一気に出す予定です。
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