第13話

心配なんだから、仕方ないだろ
3,577
2019/12/22 21:09
退院した翌日、私は学校に来ていた。

悠貴と神谷くんの3人でご飯を食べていると、
教室の入り口に隣のクラスの女子が3人、
集まっているのに気づく。

(なんだろう、あれ)

教室の中を見回しているところを見ると、
誰かを捜している様子だった。

少しして、クラスメイトの女の子が
私たちのいる机までやってくる。
クラスの女の子
クラスの女の子
佐久間くん、あの子たちが呼んでるよ
佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
ん? 俺?
焼きそばパンにかじりつこうとしていた
悠貴は、袋にそれを戻すと立ち上がる。
佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
鉱、あなたのこと頼むぞ
神谷 鉱
神谷 鉱
ボディーガードは任せときな
あなた

私、ひとりでも大丈夫だよ。
小学生じゃないんだから……

佐久間 悠貴
佐久間 悠貴
心配なんだから、仕方ないだろ
後ろ髪を引かれるのか、
何度も振り返りながら女の子たちと
教室の外へ出ていく悠貴。

(なんだろう、胸がすっきりしない。
話なら教室の前でもできるのに、
どうして教室から離れていく必要があるの?)

焦りが募って、私は戸惑う。

(ここではできない話をするのかな? 
それって、告白とか?)

そう思ったら、
今度はズキズキと胸が痛みだす。

複雑な気持ちで悠貴たちを見送っていると、
神谷くんがぶっと吹き出した。
神谷 鉱
神谷 鉱
あいつ、あなたちゃんのこととなると
本当に過保護だよな
あなた

うん。大事にされてる自覚はあるけど、
ちょっと恥ずかしいかな

神谷 鉱
神谷 鉱
あそこまで露骨だとな。
……で、あなたちゃんはなんで
あいつが呼び出されたか気にならない?
あなた

え……それは気にならないって言ったら
嘘になるけど、詮索するのも悪いし……

神谷 鉱
神谷 鉱
詮索していいんだよ、あなたちゃんは
あなた

えっと、ごめん。どういう意味?

神谷 鉱
神谷 鉱
それは秘密。だけど、もし望むなら
俺はあなたちゃんの力になるよ
あなた

神谷くん……

神谷 鉱
神谷 鉱
きみが怖くて踏み込めないときは
背中を押す。それがふたりの親友である
俺の役目だからね
今までの私は人と付き合うときに、
深く踏み込まないようにしてきた。

いつか失望されて、大事な人が離れていく
痛みを少しでも和らげるためだ。

その癖は親友ができてからも、
なかなか抜けきらなかった。

(でも、もっと踏み込んでもいいのかな。
大事な人のことは、特に)
あなた

神谷くん、私……
もっと知りたいって思ってもいいのかな?

神谷 鉱
神谷 鉱
もちろんだよ
あなた

じゃあ、悠貴のことを追いかけたい。
なんか……ね、悠貴が他の女の子と
話してると胸がモヤモヤするの。
その理由を知りたい

それを聞いた神谷くんは目を見張って
驚いていたけれど、すぐにうれしそうに
はにかんだ。
神谷 鉱
神谷 鉱
うし! 
じゃあ参りましょうか、お姫様

プリ小説オーディオドラマ