長い夢を見ていた気がする。
真っ暗闇の中をふよふよと漂っていると、
どこからか声が聞こえてくる。
泣きそうな声が必死に私に呼びかけてくる。
それに引き寄せられるように、
私の意識は浮上していった。
***
目を開けると、視界いっぱいに広がる悠貴の顔。
私の名前を呼んだ彼の頬をいくつも
涙が伝っていく。
視線がかち合うと、
彼は横になっている私を抱きしめた。
私は重く怠い腕を持ち上げて、
悠貴の背に手を回す。
言葉を詰まらせながら、
悠貴はなにが起きたのかを話してくれる。
私は林間学校の肝試し中に山の斜面から落ち、
近くの病院に運ばれたらしい。
ここはその病院の個室。
命に別状はないものの、
私はまる1日眠っていたのだとか。
先生はというと、今私の両親に電話をしに
行ってくれていて席を外しているのだと
教えてくれた。
怒鳴り声が病室内に響く。
悠貴は眉根を寄せて、
見たこともないほど怒っていた。
(あのとき……悠貴はきっと、
肝試しの日のことを言ってるんだ)
(私はまた、間違った?)
【価値のない私に生きる意味なんてないんだ】
いつかの遺書みたいに、
私はまた誰かが悲しむことを考えずに
勝手に死を選んだのかもしれない。
どれだけ悠貴を傷つけたのかに気づいて、
私は泣きながらその胸にしがみつく。
悠貴は私の手を強く握りしめる。
私は悠貴の心に応えるように、
指を絡めるように固く繋ぐ。
そう言って、悠貴は繋いだ手を引き寄せると
私にキスをしたのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。