第3話

私、おかしい...
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2018/10/09 12:54

柚香 「あなた!おはよー」


あなた 「柚香、おはよう!」


柚香 「ね、昨日見ちゃったんだけどさ...」


あなた 「...?」


柚香 「あなた、裕乃くんとだいぶ仲良くなってるよねw」


あなた 「は、はぁ!?なに言ってんの?違うから、あれは!!」


柚香 「でも、めっちゃ笑顔だったよ?」


あなた 「それは...あいつが...!!」


裕乃 「俺の名前はあいつじゃありませーん。」





突然頭にポンッと手を置かれて言葉がつまった。





柚香 「裕乃くん!?」


裕乃 「おはよう、佐藤。」


あなた 「...なんで毎朝私のことを驚かしてくるわけ?」


裕乃 「あれ?なんか不機嫌なの?」


あなた 「別に不機嫌じゃない。手、邪魔。どかして」


裕乃 「名前で呼ぶ約束したのに、破るあなたが悪いと思う。」


あなた 「ちょ...!!」


柚香 「え!?いつの間に名前で呼び合う仲になったの!?」


裕乃 「昨日約束したんだよな」


あなた 「確かにしたけど...わざわざ言うことないでしょ!?」


裕乃 「いーだろ別に。変に誤解されんのもあなたに迷惑だろ?」


あなた 「...裕乃には迷惑じゃないの?」


裕乃 「俺は逆に...てか、俺の事はどうでもいいんだよ。早く教室行くぞ」


あなた 「勝手に切りあげないでよ!」


柚香 「普通に仲いいと思うけどなぁ...」


あなた 「それは気のせい!」





なんか変なところできったな、この人。
きっと、裕乃ファンの女の子は私のこと恨むんだろうなぁ...。









キーンコーンカーンコーン...





先生 「はい、授業はじめまーす。」


日直 「気をつけー、礼」


「「「お願いしまーす」」」


裕乃 「なぁ、あなた。」


あなた 「...何?」


裕乃 「そんな嫌な顔すんなって」


あなた 「...何?」


裕乃 「教科書見せて?」


あなた 「...えー?どーしよっかなー??」


裕乃 「は、うざw」


あなた 「見せてあげるよ、昨日のお礼ね?w」


裕乃 「ん、ありがと。」


あなた 「てかさ、ジャージいつ渡せばいいの?」


裕乃 「もういっその事、持ってていいよ?」


あなた 「え、なんで?」


裕乃 「また隠されたらどーすんの?」


あなた 「...探す」


裕乃 「捨てられてたら?」


あなた 「...。」


裕乃 「ほらな?だから持っとけ」


あなた 「でも、裕乃のが無くなっちゃう...」


裕乃 「俺は、二個持ってるから平気。」


あなた 「.....いいの?」


裕乃 「隣だから特別。俺に守らせて」


あなた 「わ、分かった...」





今なんかキュンとしたのは気のせいだから。
...おかしい!!!なんでこんなにサラッと言えんの!?
こっちが恥ずかしいんですけど...。





男なんて皆一緒なのに...なんか裕乃だけは違う感じがする。
...芸能人だから?
そうだよね、きっとそうだ。

...そうであってほしいよ...。
《恋》なんて、《好き》なんて知らない...!









「ねえ、ちょっとあなたちゃん。」


あなた 「...?」





うわ、ついに来てしまった...。

授業と授業の間の休み時間。
理科室へ移動する前に、柚香がトイレ行った時...あの例の女子三人組が話しかけてきた。


左から林 彩音はやし あやねちゃん、空野 美羽そらの みうちゃん、花崎 朔はなざき さくちゃん。

結構有名なファンらしいけど...。





彩音 「ちょっと裕乃くんに近づきすぎじゃない?」


美羽 「自覚ある?」


朔 「自分だけ少し近いからって、自慢したりしてる?」





いきなり質問攻めですか!?
...そんなつもり一切ないよ。

別に自慢したいなんて思ってないし、近づいてるなんて思ってない。





あなた 「別に私ファンじゃないよ。ただ席が隣ってだけ。」


美羽 「じゃあ恋愛感情もないってことだよね?」


あなた 「......」





...「そうだよ」って言えないのは、なんで?
言いたいのに、そう言ったら終わるのに...なぜか言えない。





彩音 「言えないってことは...好きなの?」


あなた 「ち、ちがっ...!!」


朔 「あなたちゃんってさぁ、中学校のとき浮気されてから男子にきょーみないんでしょ??じゃあ、好きなわけなくなーい?」


美羽 「そーなんだ!じゃあ安心!...でもさぁ」


あなた 「...?」


美羽 「裕乃くんかっこいいから、どーせ好きになるでしょ?」


あなた 「...なにそれ」


彩音 「は?」


あなた 「かっこいいからかもしれないけど、顔だけが全てって訳じゃなくない?」


朔 「なに、急に」


あなた 「あなた達は知らないかもしれないけど、裕乃は...」


美羽 「は?気取って呼び捨て??」


朔 「ほんとに、イラつく!」


彩音 「今すぐあんたの事省いてもいいんだけど、こっちは。」


あなた 「...裕乃の良さを少ししか知らないあなた達に言われてもなにも怖くない。」





嘘。本当は怖い。今だって少し震えてる。
...大半の人から無視されたりするってことでしょ?
しかも、ジャージ隠されるだけじゃ済まないでしょきっと。
そんなの嫌がらない人なんていない。

でも、話すようになってまだ少ししか経ってないけど、裕乃の良さなら両手に収まらないくらい知ってる。

柚香だっている。だから、こんな人達には負けない。



美羽 「頭きた。明日からあんたは終わり」


あなた 「...」


朔 「ついでに、あんたは中学のときに男に捨てられた可哀想な女ってことも広めといてあげる。」


あなた 「...うそ、」


彩音 「そうしたら優しい男子がカラダで慰めてくれるよ。おめでとう」





カラダで...?
やだ、気持ち悪い...!





あなた 「やめて。」


朔 「じゃあ裕乃くんに近づかないで?」


美羽 「そうしてくれたら、私達もあんたも得でしょ?」


彩音 「そうだよ、元々男子に興味ないんでしょ?」





...中学生時代。
元彼に目の前で浮気されてからショックで立ち直れなくて、この先好きな人なんて...興味を持つ人なんて現れるわけないと思ってた。

......でも、でもね...





あなた 「...裕乃は信じてみたいから。離れることはしたくないよ。」


彩音 「なっ!!?」


美羽 「あんたなんなの!?」


あなた 「...っ」


朔 「今までで一番うざい。」





やばいかな、これ...
平手打ち...?椅子で殴られる?

どっちもやだけど...覚悟決めよ...!!





裕乃 「はい、そこまで。」


「「「!!!?」」」


美羽 「ひ、裕乃くん?」


朔 「...ど、どうしたの?」


裕乃 「もうすぐ授業始まるのに来ないから、呼びに来てみた。大丈夫?なんか揉めてたみたいだけど...」


彩音 「いや!だいじょーぶだよ!私達行くね!呼びに来てくれてありがと♡」


裕乃 「はーい」





...なんとか助かった?





裕乃 「...あなた。」


あなた 「っ...」


裕乃 「そんな事、思ってくれてたんだ。」


あなた 「...え、まさか聞いてたの!?」


裕乃 「誤解。聞こえたの、廊下から」





私、変なこと言ってたよね!!?
...うわ、最悪...。





裕乃 「俺の印象、結構変わった?」


あなた 「うるさい...。なんでこういう時に助けてくれんの?」


裕乃 「守らせてって言ったじゃん。」


あなた 「...変わったよ!女の子にチヤホヤされてニコニコしてるモデルから...。」


裕乃 「どんな風に変わったの?」


あなた 「い、言わない!ほら、私達も行くよ!」


裕乃 「あ、逃げんなよ。」





...!!

軽く腕をひかれ、倒れそうになったら...
優しいあたたかい温もりが、背中から全身に伝わってきた。





あなた 「ね、ねぇ...!」


裕乃 「...これはあなたが悪い。」


あなた 「なんで!私なにもしてないよ...!!」





バックハグです...。
ハグされたまんま話されてます。

心地良い声がくすぐったい。
...この間まで、この声が嫌いで...こいつが苦手で、大嫌いだったのに。





今、こんなにも嬉しくて泣きそうになっちゃう...。





...キーンコーンカーンコーン......





鳴り響くチャイムの音。

あーあ、遅れちゃったじゃん。
...まあいっか。裕乃といれるなら...

なんて思っちゃうよ?いいの?


好きになるわけないって、思ってたのに...





あなた 「...ぐす..っ」


裕乃 「え、なんで泣くの!?」


あなた 「ばか...」


裕乃 「そんなにやだ?ごめん、離す...」


あなた 「はなさ、ないで...!」





ちょっと好きになっちゃったじゃん。
...興味、持っちゃったじゃん。





私、おかしい。
なんか今日はおかしいんです。









結局、授業さぼっちゃったし...!!


泣き顔見られたし...!!





色んなことがありすぎた一日だった...。

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