第2話

苦手なのかな...
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2018/10/08 12:49

キーンコーンカーンコーン...





やったー!!やっと今日の授業終わったー!
...疲れた。早く帰りたい...でも掃除あるんだよね。

ジャージに着替えようとロッカーを見ると...
あれ、ない。
朝確かにロッカーに入れたジャージがなくなってる。





あなた 「...はぁ...。」





私の視線の先にはなにやらニヤニヤと三人で笑っている女子達が。

絶対あの子達じゃん...。
なんでこういう事するかな、意地悪してくるんじゃなくて頑張ってアピールするもんでしょ普通。

どーしよ...。私の班の掃除場所の先生、厳しいんだよね....。
探そっかな...もう、最悪。





あなた 「柚香」


柚香 「どうしたの?」


あなた 「ジャージ隠されちゃったみたい。」


柚香 「え?誰に!」


あなた 「多分鈴木裕乃ファンの子達だと思う...」


柚香 「どーすんの?」


あなた 「ちょっと探してこようかなって思って...」


柚香 「でも先生厳しいよ?怒られちゃう」


あなた 「明日も明後日も怒られるより、今日一日怒られるだけの方がマシじゃない?」


柚香 「...そうだけどさ...」


あなた 「だから先行ってて?」


柚香 「でも...」


あなた 「いいから、柚香まで怒られちゃうの嫌なの。」


柚香 「...わかった。早く来てね?」


あなた 「うん、まかせて。」





教室の隅まで見たけど無くて。
ゴミ箱にもなかった。

どこいったんだろ、私のジャージ。
...はあ...こんな事になるから嫌なんだよ、有名人の隣は。





あなた 「...どこいったの...」


裕乃 「あなたちゃん。」


あなた 「!?...またあんた?なんか用?」


裕乃 「これ、貸す。」





鈴木裕乃の手にはジャージが...





あなた 「...なんで?別にいらない」


裕乃 「俺が探すから」


あなた 「なにを言ってるのか分かんない。」


裕乃 「掃除時間始まりそうなのにジャージに着替えてないって事は、ジャージないんでしょ?誰かに隠された?」


あなた 「忘れたっていう選択肢はないの?」


裕乃 「忘れてたらそんな困ってる顔しないよ、普通。」


あなた 「...でも、なんであんたが探すの?関係ないじゃん。」


裕乃 「隠されたんでしょ?俺の事を応援してくれている人達に。」





なんで...そう簡単に見破ってくんの?





あなた 「だからって、あんたが無理する必要ない...」


裕乃 「俺が守りたいって思っただけだから。ここは素直に受け取って?」


あなた 「あんたが怒られちゃうよ...?」


裕乃 「全然構わない。ほら、早く」


あなた 「...ありがとう。」


裕乃 「うん。じゃあ見つけたら渡すね」





そんなに優しい笑顔で言われたら受け取るしかないじゃん。
...気づいてくれた、なんで...?









あなた 「...はぁ、ギリギリセーフ!」


柚香 「あなた!?ジャージあったの?」


あなた 「ううん...実はね、あいつが貸してくれたんだよね。」


柚香 「え?裕乃くんが?」


あなた 「うん、なんか探してくれるみたいで...」


柚香 「あの裕乃くんが!?珍し...」


あなた 「え?どういう意味?」


柚香 「えー?だって裕乃くんって、一人の女の子に優しくしたりしないからさ。皆に笑顔で、でも誰にも手助けしないって言われてるよ?その対応が新しくて人気らしいよ。笑顔は優しいのに塩対応、でも話しかけたらちゃんと話してくれるーって言われてる。」


あなた 「へー?まあ、どーでもいいけど??掃除しよー!」


柚香 「...照れてんじゃないよw」


あなた 「別に?照れてなんかないし!」





結局、全然掃除なんて手に負えず...
なんなのあの人、私が隣だから?
...そうだよ!!絶対そうだ!そうじゃなきゃ...おかしいもん...。









「「「さよならー」」」





ようやく放課後。
やーっと帰れるよ!!...ただいつもと違うのは...左手に持った手提げに入っているあいつのジャージ。
洗濯して返すために持って帰るけど、なんか不思議な気持ち。

大嫌いで、大の苦手なのに...なんでだろ。
顔が熱くなってしまう。





あなた 「...?」





一階に降りてふと裏庭を見ると、そこには草むしりをしているあいつの姿が...。

なんで草むしりしてんだろ...?
....!?まさか、私のせいで?

絶対にそうだ。罰で草むしりやらされてるに決まってる。




あなた 「...鈴木裕乃!」


裕乃 「?」


あなた 「私も手伝う。」


裕乃 「なに言ってんの?」


あなた 「だから、草むしり手伝うって言ってんの」


裕乃 「いやいや。そんな事させられる訳ないでしょ」


あなた 「...だって私が悪いじゃん。ジャージ、ちゃんと管理しなかったから...」


裕乃 「それは違うでしょ。あなたちゃんは悪くないよ」


あなた 「....でも手伝う。借りは返さないと」


裕乃 「やんなくていいから、俺と話してて?」


あなた 「...わかった。」





どうしてもって言われたから、やらない事にした。
すぐ近くに座りこんで、話すことにする。





裕乃 「あとさ、お願い聞いてよ」


あなた 「内容による、なに?」


裕乃 「俺のことさ、名前で呼んでよ」


あなた 「...は!?」


裕乃 「だってさ、ずーっと《あんた》とか《鈴木裕乃》とかじゃん?」


あなた 「...それは、ちょっと...」


裕乃 「なんでよ」


あなた 「男子のこと、名前で呼んだことなんて...あんまりないから...。」


裕乃 「あ、恥ずかしいんだ?」


あなた 「違うよ!いいよ?呼べばいいんでしょ?」


裕乃 「うん。俺も名前で呼ぶから」


あなた 「...わかった...努力します。」


裕乃 「よーし、じゃあ頑張ろー」


あなた 「なんなのほんとに...」


裕乃 「え?なんか言った?」


あなた 「べーつにー?早くやらないと終わんないよーって」


裕乃 「まかせろ」


あなた 「ドヤ顔やめて?w」


裕乃 「面白いんだね、あなたって。」


あなた 「!?」


裕乃 「...なに?」


あなた 「いやなんでもない。手動かして?」


裕乃 「はいはい。...あ、そうだ」


あなた 「まだなにか?」


裕乃 「ジャージ、見つけた。」


あなた 「...え、嘘...」


裕乃 「ほんと。俺の鞄に入ってる」


あなた 「なんか、感謝しかしてない。ありがとう...ごめんね?迷惑かけちゃって」


裕乃 「名前呼んでくれたら許す」


あなた 「またそれ?...一回だけなら、呼べる...」


裕乃 「まじ?じゃ、どーぞ」


あなた 「...まって?心の準備が...」


裕乃 「さん、にー、いち?」


あなた 「ひ、裕乃!!」


裕乃 「......」


あなた 「む、無反応やめてよ!」


裕乃 「いや、思ったより...」


あなた 「なに!?」


裕乃 「な、なんでもねーよ!俺やるから!」


あなた 「なんなの!?...頑張ってね、見てるから」


裕乃 「はーい」





めっちゃ恥ずかしかった!!!
ちょー顔熱い...

早く終われ、この時間!!









あんなに苦手だったはずの、す...裕乃は...意外と?大丈夫なのかもしれないです...

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