第5話

嫌いと大好き
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2018/10/12 14:27

彩音 「ねえ、あなたちゃん!」





授業が全て終わって、掃除も終わった帰りのHR前。
彩音ちゃんに呼ばれて振り返る。





彩音 「ちょっといいかな?」


あなた 「え、うん...?」





ついて行ったら女子トイレについた。
...はい、怖いです。





彩音 「あのさぁ...この写真なに?」





目の前に出されたのは、さっき私が足首を挫いたときのおんぶの写真だった。






あなた 「......」


彩音 「ねえ、どんだけ調子のれば気が済むの?」


あなた 「ちがっ、これは...!」


彩音 「なにが違うんだよ、これは立派な証拠なの。裕乃くんの事が好きな人は沢山いるんだよ?これ、拡散したらどうなると思う?」


あなた 「や、やめて...」


彩音 「じゃあどうすればいいか分かるよね?」


あなた 「...なにをすればいいの?」


彩音 「裕乃くんに近づかない。それだけじゃ心配だから...裕乃くんに嫌いって言ってきて?」


あなた 「そんな...!」


彩音 「できないの?じゃあ、拡散するけど?」


あなた 「...分かった。やるから」


彩音 「ふふ、影でコソコソ話してたら許さないから。」


あなた 「.....」


彩音 「じゃ、HR始まるから行こー!」





さすがに写真ありっていうのは逆らえないよ...
離れたくないって思ったのになぁ...。


...キャラ変わりすぎじゃない?
もう、怖い...。

裕乃に「嫌い」なんて、言いたくないよ...









「「「さよーならー」」」





...なるべく裕乃に会わないように帰ろ。

カバンを持って、早歩きで教室を出た。
柚香、今日はそのまま塾に行くらしいから...

早く早くってまだ痛みが残る足を進める。


...会わないって思ってたんだけどな...





裕乃 「あなた」





なんで会っちゃうかなぁ...





あなた 「...ひ、ろの...」


裕乃 「どうした?まだ足首痛い?」


あなた 「歩けるから大丈夫だよ。じゃあ、私帰るから」


裕乃 「俺も途中まで一緒に帰っていい?」


あなた 「なんでよ。」


裕乃 「そのまま仕事行くから」


あなた 「他の子と帰りなよ、ほら来てるよ?」





ちょうどいいところに女子達が来たから、説得する。
...でも、裕乃は





裕乃 「俺、あなたと帰りたいんだけど。」





嬉しいこと言ってくれた。
...でも、駄目なんだ。

私だって、裕乃と帰りたい。
でも仲間外れにされるのは嫌だから...





あなた 「だって、ほら。私怪我してるから遅くなって、お仕事間に合わなくなっちゃうかもしれないから!」


裕乃 「そんな痛いの?尚更一緒に帰るよ」





違う、そういう事じゃない。
...早く行かないと...!





あなた 「い、いいから!私、帰るの!」


裕乃 「どうしたんだよ、さっきっから変だぞ」


あなた 「...あんたのせい。」


裕乃 「なにが...」


あなた 「あんたの事が嫌いだから!」





...言っちゃった。
涙出てきちゃった、逃げないと...早く行かないと行けないのに。
足が固まって動かない。

早くこの空間から、この冷たく冷めた空間から逃げたいのに...少しでも裕乃といたくて、もうよく分からない。





裕乃 「なに言ってんの...?」


あなた 「だから...あんたのせいって言ってるの」





今にも泣きそうなの、上手く誤魔化せてるかな...?
バレていませんように...。





裕乃 「まじなの?」


あなた 「っ...ごめん、嫌い...」





そう言って、走り出した。
足...痛いはずなのに、今は心臓の方が痛いや。

終わった。完璧に、嫌われたよね...





あなた 「っ...ぐすっ...!」





走っていたら、勝手に涙が溢れだす。

...こんなにも辛いなんて思ってなかった。








ああ、私...裕乃のことが好きなんだ。


もう一生、人を好きになるなんて思ってなかった...。
こんなにも好きって、今自覚してしまった。





嫌いなんて思ってないよ、好きだよ。大好きなんだよ。









こんなにも、涙が零れるのは久しぶりです...

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