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第2話

浮世絵師と友人達 弐
この町は、山のふもと辺りに出来ている町でありその山は神山だと言われている。山に完全に立ち入り禁止な訳では無いが、深く立ち入る事は禁止されており、奥に行けぬよう注連縄が施されている。

何故今その話をしたかというと、俺の使いたい色の染料となる植物はその山にしか生えていないからである。

先程言った通り入ってはいけない訳では無いのだが、皆常日頃から入るような場所ではない為個人的には少し罪悪感がある。だから、わざと大回りして住民の目に付かないようにいつも取りに来ているのだ。
妖華 藍斗 (イト)
(し、失礼します…)
山に足を踏み入れる。山は木がこれでもかと言うほど生えており鬱蒼としている。何となく澄んだ空気に気持ちが軽くなるようだが、その反面ここに長く居すぎてはいけないという本能的な信号が脳に付き纏う。

幸い、俺の取りたかったものはすぐに見つかりそれを幾つか取るとすぐに山を下りた


へぇ、あの子があいつが言ってた…ふふ、確かにな
そんな声と視線にも気付かぬままに


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

妖華 藍斗 (イト)
ふぅ…何かなぁ…緊張する気兼ねなんか無いはずなんやけどな
雰囲気故か言い伝え故か、あの山は確かに神山と言われてもおかしくないような感覚がする。…まぁ、それも気の所為と言われればそれまでなのだが

俺がいつもの町並みを、ボーッとしながら歩いていると
橙河 智乃 (チーノ)
お、イトやん。どうしたん?そんな顔して
鶏冠石けいかんせき色の着物の袖を揺らし、唐突に話しかけてきたのは、橙河 智乃(だいかわ ちの)。勝手にチーノというあだ名をつけてる。

商人としてこの町に来た際に、ここが気に入ったらしく越してきた。たまにここから筆や紙を買ったりもする。そのお陰で顔見知りになり、よく話す友人関係になった。俺でも買える安さのくせに結構上質なんだよな…
妖華 藍斗 (イト)
あ、チーノ。…今俺そんな酷い顔しとった?
橙河 智乃 (チーノ)
酷いっちゅうか、ちょっとぐったりしてるっちゅうか…体調でも悪いん?
妖華 藍斗 (イト)
いや、体調悪い訳やないから大丈夫やで。それより何でお前外でとるん。店は?
チーノは元商人だった経験を活かしてか、今は道具屋をやっている。普段使えるような雑貨から、珍しい珍品まで色々取り揃えているからそこそこ人気を博している。
橙河 智乃 (チーノ)
仕入れに来とったんよ。さっきまで商人がここに来とってな、そっから買っとったんや
妖華 藍斗 (イト)
へぇ…お前交渉術凄いからな。また安く買い取ったんちゃうん?
橙河 智乃 (チーノ)
あたぼうよ!てか、あんな高く価格設定する方が悪いんや。誰も買う訳あらへんやろ、あんなん…
妖華 藍斗 (イト)
確かにたまにそんな値段のやつ見かけるな…主に都市からの商人やけど
橙河 智乃 (チーノ)
あ、今日大丈夫やったら飯行かん?前に知り合いの方の商人に、ここら辺の美味い店教えてもろてん!
妖華 藍斗 (イト)
そうなんか!じゃあ、行こうや!…でも二人だけやとあれやし、他の奴らも誘わん?
橙河 智乃 (チーノ)
ええけど、俺これから店やからイトの方で誘うんやったらええで
妖華 藍斗 (イト)
勿論や。任せとき!
橙河 智乃 (チーノ)
じゃあ、日没頃に俺の店集合や
妖華 藍斗 (イト)
おう、楽しみにしとるで!


そこでチーノと一旦別れ、家への帰路を辿る。

うーん…どうしよ。誰誘おうかな。とりあえず、この植物を家に置いて…あっ!あいつならいいかも!

俺は家の染料置き場にしている小さな物用の、引き出しにその植物をしまい、擦る道具を一応出してから家を出た。帰ってきたらすぐに擦れるように。



俺は思い立った友人のいる店の前に着く。羅宇屋らうやと書かれた看板が屋根の上にある。

…あぁ、そう言えば刻み煙草きれてたっけ。ついでに買うか。

そう思いながら、店の戸を開ける。
妖華 藍斗 (イト)
だいせんせ〜
空井 蒼 (鬱先生)
ふぅ…いらっしゃ…ってあぁ、イトか。どしたん?
煙管を吸いながら、会計の席に座っているのは空井 蒼(うつい そう)。灰色の細渕の眼鏡をかけており、深海のような髪色と整った顔。“黙っていれば”綺麗な人だ。

ちなみに、大先生というのは学生の頃のあだ名を俺が未だに呼び続けているだけ。本人は大先生は烏滸がましいと、鬱先生とでも呼べと言うのだが俺は中々変えられない。
妖華 藍斗 (イト)
調子はどうなんかな〜って
空井 蒼 (鬱先生)
いやぁ…最近は調子悪いで
はぁ…お前のその調子悪いっちゅうんは…
妖華 藍斗 (イト)
どうせまた、遊郭の遊女でも引っ掛けて遊んどったんやろ?
空井 蒼 (鬱先生)
別にええやんか〜!仕事上来るんやもん!あんなべっぴんさん話しかける他ないて!
羅宇屋というのは煙管に入れる刻み煙草や、煙管の本体を売っている店なのだが、遊女は煙管を吸っている人が多く、この町の裏通りにある遊郭からここまで来る遊女も少なくない。…だから大先生はその女達を引っ掛けているのだ。それも結構な回数。
妖華 藍斗 (イト)
遊女がほんまに振り向くわけないやろ!ええ加減にせんか、全く…
空井 蒼 (鬱先生)
イトは俺のオカンか何かなんか
妖華 藍斗 (イト)
ちゃうわ!…でも俺が唯一の救いだと思っとんのは、女色に溺れとらん部分やと思っとるけどな
空井 蒼 (鬱先生)
やろうと思えばやるけどな。ふぅ…
そうやってはぐらかし、口から煙を天井に向かって吐く。

そう言ったの何回目やったっけ?…結局大先生も遊びとしか捉えていない証拠だ。女遊びがいいかどうかは別として、色に耽けないのはまだ大丈夫な内だ。
妖華 藍斗 (イト)
にしても、お香も白檀も増えたな…いっそお香屋にしてしまった方がええんちゃう?
店内の商品を見て回ると、前回来た時よりもお香が増えていた。勿論、煙管も刻みたばこもかなり種類も品揃えもあるのだが、お香が段々とその種類に勝ろうとしていた。
空井 蒼 (鬱先生)
生憎と、生計と趣味の為に始めた店をそう簡単に変えれへんのよ。それに何より変えるのめんどくさいんじゃ〜
そう、この店は半分大先生の趣味なので大先生の匙加減と売れ筋によって品揃えが変わるのだ。だから、日々変わる時もあれば、暫く変わらない時もある。
妖華 藍斗 (イト)
そうなん?ま、これもある意味大先生らしいしこれはこれで…
空井 蒼 (鬱先生)
まぁ、本気で変えたいと思った時に変えるわ
妖華 藍斗 (イト)
それ一生変えんやつやん
空井 蒼 (鬱先生)
あ、分かる?
妖華 藍斗 (イト)
そう言えば大先生、今日の夜頃空いとる?
空井 蒼 (鬱先生)
おん。…なんかあるん?
妖華 藍斗 (イト)
いや、チーノが美味い飯屋見つけた言うとったから大先生行くかなって
空井 蒼 (鬱先生)
おぉ…ええな!じゃあ俺は行こうかな。どっかに集まるん?
妖華 藍斗 (イト)
チーノの店の前集合な
空井 蒼 (鬱先生)
りょーかい。…他には誘わんの?
妖華 藍斗 (イト)
あと誰がええかな…
空井 蒼 (鬱先生)
シャオちゃんとか、ゾムとか片っ端から誘ったらええんちゃう?
妖華 藍斗 (イト)
皆、空いとるかな?
空井 蒼 (鬱先生)
全員暇やし、大丈夫やろ
妖華 藍斗 (イト)
お前が1番の暇人なくせに何言うとんねん
空井 蒼 (鬱先生)
気まぐれな浮世絵師に言われとうないわ
妖華 藍斗 (イト)
…返す言葉がねぇ
空井 蒼 (鬱先生)
何、飯の誘いの為だけに来たん?
妖華 藍斗 (イト)
あぁ、そうそう。忘れるとこやったわ。刻み煙草くれへん?切らしとってさ
空井 蒼 (鬱先生)
あいよ。ちょっと待っとってな
紺青こんじょう色の少しよれた着物で、いつもここに座っとるから近所の叔母様方や女子おなご達からは色っぽいと噂だが、俺にとっちゃただの残念な奴だからな…
空井 蒼 (鬱先生)
ほい、これでええよな
妖華 藍斗 (イト)
ありがと。代金は…
と、会計を済ませた。
妖華 藍斗 (イト)
じゃあ、日没頃に道具屋前集合な
空井 蒼 (鬱先生)
へいへい
微笑み、へらりと手を振る大先生。…本当に来るだろうかと疑うが、まぁ来なかったらここに寄ってから来ればいいかと思い店を出た。





その後、友人達の店に行って誘ってみると何と全員空いてるとの事だったので、日没頃皆で道具屋の前へ集合し、飯屋へ向かった。

あ、ちゃんと大先生は来おったで。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


飯屋にて
空井 蒼 (鬱先生)
なぁ、藍斗
妖華 藍斗 (イト)
…どしたん、大先生?イト呼びじゃないなんて
黄田 紗緒 (シャオロン)
最近、大丈夫なんか?
妖華 藍斗 (イト)
え、何が?
緑屋 望 (ゾム)
だからー、お前の体質の事やって!
妖華 藍斗 (イト)
あぁ…ふふ、大丈夫やって。心配性やな〜お前らは
空井 蒼 (鬱先生)
そりゃ幼少期からあんなもんいっぱいあったら心配性にもなるわ
妖華 藍斗 (イト)
それは異論ないけどな
黄田 紗緒 (シャオロン)
…何かあったら迷わず言うんやで
緑屋 望 (ゾム)
迷惑とか思うんはやめぇよ
妖華 藍斗 (イト)
うん!
白弌 蘭 (ひとらんらん)
何の話してるの?
栗川 瑛見 (エーミール)
何かあったんですか?
妖華 藍斗 (イト)
ううん、こっちの話や。さ、食べようぜ!
橙河 智乃 (チーノ)
あ、ちょっとイト!それ俺の分やって!
妖華 藍斗 (イト)
早いもん勝ちや!
そうやって青年達の喧騒は、宵闇と共に酔いしれて行った




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サク
どうも皆さん、作者のサクです!
サク
いや〜、人間組出揃いましたね
残りの人達は妖怪と思ってもらって構いません
(あ、すみませんが今回もしんぺい神さん、兄さん、軍曹さんは出ません
(o_ _)o)
サク
それにしてもこれ書いててめちゃくちゃ思ったんですけど…

カタカナ使えないってくっそむずくね!?
めっちゃ表現方法限られるんだけど!

ってなりました。現代の日本公用語万歳ですね。だってマジでヤバいとか、絶対使えないですもん。…まぁ、いい縛りだと思えばそれはそれで面白いですけどね。ある意味真の日本語に触れられるかもしれません。
サク
それと、江戸時代の職業とか調べたんですよ。この小説を書くにあたって。

え!?こんなんあったの?知らね〜…

ってやつが案外あって。あ、羅宇屋はその内の一つです。これ絶対大先生に似合うから使ったろ()的な感じで使いました。
だって煙管吸って和服着てる大先生どちゃくそエr(((殴……失礼致しました
サク
まぁ、少々荒ぶってしまったので今回はこの辺で…

バイバイ