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第12話

忍び寄る魔の手
それから数日、町は以前より重苦しく感じてきた。それは決して気の所為とは言えない程目に見えるものであった

皆で俺の家に集まっていた時、
黄田 紗緒 (シャオロン)
ケホッ、ゔぅん…何か最近咳出るな
やけに乾いた咳を零したシャオは、少々苦しそうだった。
妖華 藍斗 (イト)
シャオ、大丈夫か?
空井 蒼 (鬱先生)
…これは本格的に悪鬼の仕業やと思った方がええと思うな。町中で流行ってるこの風邪みたいなもん…酷い人は高熱が何日間も続いとるっちゅうやないか
緑屋 望 (ゾム)
ほんま!?…そんな酷い風邪やったんか
栗川 瑛見 (エーミール)
死者が出ていないのが唯一の救いですね…聞いたことのある酷い疫病みは町の半分程がその病で亡くなった、なんて事もあったらしいですから
白弌 蘭 (ひとらんらん)
それにしても随分と性悪だね、悪鬼っていうのは。しかもそれを操る悪い神もいるっていう話だったよね?
妖華 藍斗 (イト)
あぁ。実行犯は主に悪鬼やけど、この町に不信感と流行病を持ってきたのはそいつらちゃうかってグルさんが言っとった。今、根本の原因を究明中やって。分かったら黒猫来るから
橙河 智乃 (チーノ)
黒猫…?あ、ショッピ君の事か
緑屋 望 (ゾム)
俺達に出来ることは町の住民らの暴動を抑える…とかか
黄田 紗緒 (シャオロン)
まぁ、これ以上山神への不信感が募っとったらどうなるか分からへんもんな…
白弌 蘭 (ひとらんらん)
後はショッピ君を待つしかないね
そういう事で話がつき、今日の所は解散となった。山神がやってないという確信こそ根底にあるものの、住民が何かやらかさないかという不安も拭いきれぬものだった。



皆を戸の外まで出て見送る。もう薄明で少ししたら夜になる。…風呂の準備をしてしまって今日は早めに寝よう

そう思って身を翻し家の戸に手をかけた時だった
白弌 蘭 (ひとらんらん)
ねぇ、藍斗
妖華 藍斗 (イト)
…どうしたんや、ひとらん
何で藍斗呼びなんや?それにひとらんは鍛冶屋に持ってった刀見に行くって言って最初に帰った…何故、まだここにおるんや
白弌 蘭 (ひとらんらん)
ちょっと忘れ物しちゃってさ、中に入れてくれない?
妖華 藍斗 (イト)
忘れ物やったら俺が取りに行くわ。何忘れたん?ってか、ひとらん俺ん家で何か物見せたっけ
…何か異様さを感じる。ひとらんは持ち物も何も広げてなかったし、見せてなかったはず。それなのに忘れ物なんてするはずが…
白弌 蘭 (ひとらんらん)
忘れ物は…
あんたの命だ、妖華藍斗!
そう言った瞬間に俺の首に手を伸ばしてきた。もうそれはひとらんではなく、ひとらんに化けた誰かである事が分かった。声が徐々に変わってきて、女と男と機械音を混ぜたような不快な声になっていた。

その腕一本で俺の首を掴み、軽々と上に上げられたものだから足の着き場も無ければ息も一気に苦しくなる。
妖華 藍斗 (イト)
なっ…!あがっ、は、なせ…!
そのまま首を掴まれ締められる。その所為で首からかけていた翡翠の勾玉の紐が見えてしまった
あぁ、これか…あの山神の神力がかかったものは
妖華 藍斗 (イト)
うグッ…や、やめ…!
これは貰っていく。何かに使えるかもしれないからな
妖華 藍斗 (イト)
おま、えは…一体…!
名乗る神じゃないよ
神…?…あぁ、まずい…頭が、真っ白に…
緑屋 望 (ゾム)
イトから手ぇ離せ!!
意識を失いかけた時、そんな叫びと共に苦無が飛んでくる。それに思わず俺の首から手を離す

その衝撃で地面に倒れそうになった俺を誰かが受け止めてくれた
栗川 瑛見 (エーミール)
…ト、イト…イトさん!しっかりしてください!イトさん!
妖華 藍斗 (イト)
ケホケホっ…ゴホッ、ゔぅ…
まだ霞む眼だが一応咳と共に呼吸も出来た。だが、酸素が足りないようでまだ頭ははっきりしない
黄田 紗緒 (シャオロン)
良かった…生きとって
シャオとエミさんが安堵の溜め息を吐いているのが分かった。…来てくれたのか?
緑屋 望 (ゾム)
お前、誰や。ひとらんじゃない事は分かっとんのやぞ
苦無を構えながら攻撃態勢に入るゾム。その表情には友を傷付けられた怒りが篭っている
そう。それは残念…仲違いの為の不信感でも煽れれば良かったのに
口調が男から女に変わる。声も女っぽくなったから、恐らくこれが本性なんだろう。どろっとひとらんの顔が溶け、闇のように黒くなる。その顔はまるで誰かの顔の仮面でも嵌りそうで気味が悪かった。
空井 蒼 (鬱先生)
あいつはあんな事死んでもせえへんやつや。人選を間違ったな
見た事もないような鋭い目付きできつく睨み付ける。以前グルッペンに吹きかけたあれは今は所持していないようで、その後悔を誤魔化すように煙を吸う
ふふっ、そう。随分面白い人間共ね。
…せいぜい頑張ること。その友達ごっこを
そう言うとそいつは着物を翻し町の闇に消えていった。宵時で薄暗いもののまだ行灯が灯ってない為に何処に行ったかは分からない。

そのふっと消えて行った姿を見届けた瞬間、俺の記憶はそこでぷつりと途絶えた。


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