涼太に見られてたことを知ったのは、
その、次の日だった。
帰り道の途中、
そんな目で俺を見ないでほしい。
本当に何するか分かんない。
昔から数え切れない程俺の家に来たこともあるし、
お泊りだって普通にしたことがある。
でも、今のこの状況は違う。
ふたりとも高校生だし。
あなた、分かってんのかな。
俺の部屋に入るや否や、
まず部屋を見渡して、
ベッドに飛び込んだ。
ベッドに寝るとか、
あなたほんとに何も考えてないわけ?
階段を降りてるとき、
ずっとあなたが頭から離れなかった。
こいつまじで寝てやんの。
はぁー…
最悪だ。
寝てるあなたの上に、
俺の体。
そしたら、あなたが起きてくれた。
ちょっとくらい、
ドキッてしてほしかった。
そう言いながら俺もあなたもベッドからおりた。
さっきから“何でもない”ばっかり言ってる。
…言葉が出てこない。
あなたは下に座ってジュースを飲んでる。
あなただよ。
あなたのことが好きだよ。
ほんとに鈍感だな。
助けてくれた、って、
俺の知らないこと?
いろいろ限界で、
さっきみたいにベッドに押し倒した。
あなたのことが、
好きなのに。
そう言って、あなたを帰らせた。
あなたが帰ってから、1人の部屋に入って思った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!