本丸内へ入ると、早速へし切長谷部が出迎えてくれて、ある一室に案内される。その部屋には女審神者が静かに座っていた。パッと見身長は百六十越えで、髪は茶髪で、前髪を両サイドに分けており、腰まであるウェーブかかった長い髪を下ろしている。
服は赤色の巫女服。顔は少々濃いめの化粧。
現実で言うなら、美醜の判断や好みは別れるだろうタイプ。少なくとも、俺の顔や見た目の判断基準は美醜では無く、そこら辺に居そうか居なそうかなので、そこら辺に居そうと言う意味でこの女審神者は普通の部類に入る。
そんなこと考えている間に、くろのすけが大まかに俺について説明を終わらせてくる。
割と呆気なく終わってしまい、くろのすけに「では、頑張って下さいね」と言われ、最後にくろのすけを門まで見送った。
誰かの視線に気付き、顔を上げると長谷部が眉間に皺を寄せ睨むように俺を見ていた。審神者は気付いていないみたいだが。それどころか、「本丸を案内してあげるから、一緒に行こ」と言われ、腕に手を回される。
とは思いつつ、女子と腕を組むのは慣れている。と言うか自分も一応元の姿では生物学上女子だ。腕を組まれても何も思わない。
思わず敬語になりながら、この表現で間違ってないよな?など心配になったりする。
そして背中に刺さる視線が相変わらず痛い。なんかゴメンよ長谷部。
しかし、一文字則宗がこの本丸にいるということはゲームで言うイベントを攻略出来たということ。それを考えると、本丸の刀剣男士のレベルはそこそこ……もしくは高いのだろう。
本丸内を一通り案内されるが、短刀達は普通に遊んでいるし、鶯丸や大包平は普通に縁側でお茶していた。確かに、一見何事も無いように見える。審神者のボディタッチ以外は。けど、くろのすけは刀剣男士達が審神者の機嫌を伺っているようだと言っていた。
これが現実世界なら、皆に話しかけて人脈を広げるとか無理……と言うより、まず会話をして親しくなれそうにないなと思った人とは知人として上辺だけの付き合いになるようにしている。言うて、他人に関心がある訳でもないし、友達がいない訳でもないので、人付き合いを無理に広げようとは思っていない。むしろ面倒。媚びを売るといった行為もしないので、他愛もない話で大体のことは終わらせる。
逆に言えば、先程話した友人は媚びを売る子だった。その姿を見たり、話を聞いたりする度にわざとらしい上に、すげぇ必死じゃん……なんて思ったりしたもんだ。
さて、ここの審神者や刀剣男士の関係は一体どうなっているのだろうか。せめて彼等には尊い存在として生き生きと生活していてほしいものだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。