第4話

三話 自己満
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2021/03/25 18:02
本丸内へ入ると、早速へし切長谷部が出迎えてくれて、ある一室に案内される。その部屋には女審神者が静かに座っていた。パッと見身長は百六十越えで、髪は茶髪で、前髪を両サイドに分けており、腰まであるウェーブかかった長い髪を下ろしている。
服は赤色の巫女服。顔は少々濃いめの化粧。
現実で言うなら、美醜の判断や好みは別れるだろうタイプ。少なくとも、俺の顔や見た目の判断基準は美醜では無く、そこら辺に居そうか居なそうかなので、そこら辺に居そうと言う意味でこの女審神者は普通の部類に入る。
灰峰
灰峰
(あんまり人を偏見で判断したくないけど……何だろう。音信不通になった元女友達に似てる雰囲気だわ。俺から音信不通になったけど。男取っかえ引っ変えで何かある度騒いでは他の人を巻き込むしで距離置いたんだったっけなー。他にも色々あったけど……今となってはもはやどうでもいいが、会ったら多分またストレス溜まるだろうな。それよりも長谷部が居るわ。近侍なのかな?)
そんなこと考えている間に、くろのすけが大まかに俺について説明を終わらせてくる。
割と呆気なく終わってしまい、くろのすけに「では、頑張って下さいね」と言われ、最後にくろのすけを門まで見送った。
女審神者
名前はあなたって言うんでしょ?記憶が無い刀剣男士って他にもいるけど、貴方も無いんだってね。刀工も刀派も不明なんて謎だらけだし。でもミステリアスな人って素敵だよね。私そういう人好きだなぁ
灰峰
灰峰
(あ、そういうことになってんのね。くろのすけと審神者の話聞いてなかったわ。つか、ミステリアスキャラはまぁ好きだけどさ……何だろうこの違和感。何か、気を持たせるような……気の所為?)
誰かの視線に気付き、顔を上げると長谷部が眉間に皺を寄せ睨むように俺を見ていた。審神者は気付いていないみたいだが。それどころか、「本丸を案内してあげるから、一緒に行こ」と言われ、腕に手を回される。
灰峰
灰峰
(あ”ー色々察した。てか、推しからの視線が痛いからやめてくれ。折角の刀剣男士姿なんだからキャラ達と仲良くさせて〜。しかも、良くも悪くも“人”扱いなのか?それとも、他の言葉が思い付かなくて人の姿だから人と呼んでいるのか……仮にも刀剣男士って刀なんだけどな)
とは思いつつ、女子と腕を組むのは慣れている。と言うか自分も一応元の姿では生物学上女子だ。腕を組まれても何も思わない。
灰峰
灰峰
さっきから何に……何振かとすれ違いましたけど、大分刀が揃ってるんですね
思わず敬語になりながら、この表現で間違ってないよな?など心配になったりする。
そして背中に刺さる視線が相変わらず痛い。なんかゴメンよ長谷部。
女審神者
そうだね。最近新しく顕現可能になった則もいるし
灰峰
灰峰
則……?
灰峰
灰峰
(まさか……)
へし切長谷部
へし切長谷部
一文字則宗のことだ。お前と同じ元政府所属の刀剣男士だ
灰峰
灰峰
(則宗さんおるんか!めっちゃ会いたいんだけど)
灰峰
灰峰
あー、名前なら聞いた事あります
しかし、一文字則宗がこの本丸にいるということはゲームで言うイベントを攻略出来たということ。それを考えると、本丸の刀剣男士のレベルはそこそこ……もしくは高いのだろう。
灰峰
灰峰
(だけど、長谷部の服装からして極前の服だよな?修行行ってないのかな?それとも、何らかの理由で着てるだけか?)
本丸内を一通り案内されるが、短刀達は普通に遊んでいるし、鶯丸や大包平は普通に縁側でお茶していた。確かに、一見何事も無いように見える。審神者のボディタッチ以外は。けど、くろのすけは刀剣男士達が審神者の機嫌を伺っているようだと言っていた。
灰峰
灰峰
(まずは情報収集からかな。皆のことは一応知ってるから、初対面でも話しかけるのは特に怖くないし)
これが現実世界なら、皆に話しかけて人脈を広げるとか無理……と言うより、まず会話をして親しくなれそうにないなと思った人とは知人として上辺だけの付き合いになるようにしている。言うて、他人に関心がある訳でもないし、友達がいない訳でもないので、人付き合いを無理に広げようとは思っていない。むしろ面倒。媚びを売るといった行為もしないので、他愛もない話で大体のことは終わらせる。
灰峰
灰峰
(出世欲や認められたいなんて欲もないしなー。自分の地位を上げて人を見下したり、誰かを出し抜いてまで何かをしようとも思わんし、当たり障りない程度の関係で普通に生活出来りゃいいし……深く関わる気なんか無いしな。そこまでしなくても、普通に働けてるし)
逆に言えば、先程話した友人は媚びを売る子だった。その姿を見たり、話を聞いたりする度にわざとらしい上に、すげぇ必死じゃん……なんて思ったりしたもんだ。
さて、ここの審神者や刀剣男士の関係は一体どうなっているのだろうか。せめて彼等には尊い存在として生き生きと生活していてほしいものだ。
灰峰
灰峰
(俺の自己満でもあるけど)

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