歓迎会が終わったあと、先に失礼し、ようやくお風呂に入る。屋内の大浴場と露天風呂があり、折角なので露天風呂に入ることにした。身体が身体。最初は脱ぐのに抵抗があったが、すぐにミニタオルを巻いて浴場へ行く。
身体や頭を洗い終えたあとは夜空を見上げながら露天風呂に入り、今日のことをぼんやりと振り返る。他にも、審神者の恋人は審神者と言う職業を知っているのだろうか、審神者は刀剣男士をどう認識しているのだろうか、などの疑問を抱く。
特に何かした訳では無いが、一日の間に色んなことが起きたせいか、若干疲労が溜まり、眠たくなってくる。
目を瞑っていると、眠気で軽く意識を失いそうになるが、何とか堪える。
早く上がろうと思い、目を開けると何かの気配を感じて隣を見た。
隣には知らぬうちに三日月爺さんが居て、内心驚く。自分がうたた寝しそうになり気付かなかったにしても、音と気配がなさ過ぎる。
チラッと三日月爺さんの方を見るが、水も滴るいい男とはこのことを言うのだろうか。
同時に、自分の環境適応能力に良い意味で呆れてしまう。男性の上半身を見ただけでも恥ずかしがる人も居るみたいだが、生憎、学生時代では教室で着替えてる男子達の中に平然と入って、気付かれないこともあり、俺は見慣れている。
三日月爺さんはそう言って優しく微笑んだ。
そんな三日月爺さんに俺はある質問をした。
俺が聞くと、三日月爺さんは少し考えてから「そうだな……」と口を開いた。
一日目からある程度の情報は集まったが、どれも“ブラック”と断定するには、まだ証拠が不十分且つ浅い。強いて言うなら、現状では“グレーゾーン”だ。今の状況で感情的になり、ブラックだと断定する者も居るかもしれないがそれでは視野が狭くなってしまう。
自分が調査する立場になり、改めて思ったのは、警察の様に“外部”から証拠を取り押さえる必要がある職業も中々苦労するものだと言うこと。策を練って基本的に“外部”で相手の罪を目に見える形で暴かなければいけない。
紹介とは言っているが、本当にただの紹介なのだろうかと考えてしまう自分は、疑り深くなっているだけなのだろうか。
長義君の話によれば、今の恋人とはもうそろそろ潮時だろうとの事だし、今更紹介する必要はあるのか。そして、再び別れたとして、新しい恋人をまた連れてくるのだろうか。
身内とも呼べる刀剣男士に自分の恋人を紹介するなんて、捉え方次第では律儀とも言えるかもしれないが、何回も恋人を紹介される身としてはまたか……と思うかもしれない。
そんなことを考えているうちに、眠気は消えていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!