審神者と別れて歩いてきた廊下を戻った後、去っていった筈の鶴さんが「わっ!」と壁から現れて脅かしてくる。
間近で見る鶴さんはやはり真っ白で眩しい。それが逆光のせいかどうかは知らんが。
それに、審神者から反感を買わずに助け舟を出せたのはこの姿だから出来たとも言える。
自分自身、人の見た目は気にしないが世間はそうはいかないらしいし。
俺がきっと、性別女子で現実世界の姿で現れたなら審神者は俺のことを自身に対する嫉妬とみなし、見下すかもしれない。
俺からすれば、知り合ったばかりの異性に無意識と称して触る人に嫉妬する必要があるのかと問いたいが。俺がそんなことに嫉妬するなら、俺は一体何になりたいんだ。その女みたいになりたいのか?と逆に疑問にすら思うだろう。それに何より……
なんなら、他の女友達と出掛ける時の服装や学生服で街や学校内を歩いていたら、カップルだと間違われるぐらいだ。
制服はスカートでもズボンでも良かったので、学年の女子の中では俺だけが唯一ズボンを履いていた。何か言われたり、変な目で見られたりするかなーと思いきや、馴染みすぎて暫く気付かれなかったし、むしろ「何でズボンなの?」と聞かれたが、普通に受け入れてくれた。単純に無関心だからってのもあるかもしれないが、それを考えるとうちの学校は俺にとってはまだ悪くない学校だった。
決して頭がいい学校では無かったが、高校生活はそれなりに楽しく過ごしていた。
けれど、今の鶴さんを見て、審神者といる時より何処か生き生きしているように見える。審神者の前と刀剣男士同士だから対応が違うのか、それとも審神者があの審神者だからなのか……原因は明白といえば明白かもしれんが。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。