第12話

十一話 歓迎会
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2021/03/30 16:55
夕餉の時間になり、風呂上がりの長義君と一緒に大広間へと向かう。大広間には既に刀剣男士達が集まっており、賑わっていた。まるで宴会だ。
灰峰
灰峰
賑やか、だね
大倶利伽羅
大倶利伽羅
騒がしいの間違いだろ
隣から声がし、横を向くと伽羅ちゃんこと大倶利伽羅が立っていた。
まさか、伽羅ちゃんから初対面で突っ込まれるとは……。悪くは無いが。
燭台切光忠
燭台切光忠
あ、来たね主役
大般若長光
大般若長光
長船派じゃないって聞いて残念だったが、同じ本丸に住む仲間として歓迎するぜ?
燭台切に手を引っ張られ、空いている座布団に座らされる。宴会みたいだなぁとは思っていたが、自分の歓迎会なのだと気付き、笑ってしまう。歓迎会なんてされたのは初めてだ。
灰峰
灰峰
(こうやって見てると、ブラック要素なんてないんだけどなあ……。少なくとも審神者からの暴力や暴言はないみたいだし、手入れもされているし……。審神者の性格に問題があるのは否めないが)
皆で乾杯した後、会話をしながら楽しく食事をとり、俺は一振の刀を目で探した。
灰峰
灰峰
(みかちゃんいるかな。みかちゃん……三日爺……三日月爺さんはーっと)
三日月宗近
三日月宗近
……
灰峰
灰峰
(あ、居た。三条の皆と居るわ)
生で見ると本当にオーラがあり、流石天下五剣だと納得する。審神者が三日月爺さんにも俺や鶴さんにした言動や仕草をしていると思うと、豊前江の台詞を借りて“気安いぞ”から山姥切ズの“死が来たぞ”と“死をもってな”の台詞を言ってやりたい。
待ち構えているのは物理的“死”と言うより、社会的“死”かもしれないが。
大般若長光
大般若長光
そら、あなた。今飲まないと後はないぞ
へし切長谷部
へし切長谷部
歓迎会とは言え、羽目を外して飲みすぎるなよ
大般若長光
大般若長光
ほら、ああいう風に小言言われっちまうからな
へし切長谷部
へし切長谷部
貴様に言ったんだ大般若長光
燭台切光忠
燭台切光忠
まぁまぁ。節度を保って楽しく飲もうよ
山姥切長義
山姥切長義
節度を保つべきは、あっちにいる刀達かもしれないけどね
長義君の視線の先には、次郎太刀と日本号、不動行光が居た。何となく予想はついていたが、不動行光に関しては極になっていないので酔っ払いのままだ。
山姥切長義
山姥切長義
それと、近侍なら主にも伝えておいてくれ。彼女こそ人なんだし、節度を保って飲酒するようにと。むしろ、禁酒した方が良いぐらいだよ。記憶が飛ぶまで飲んだり、前なんて現世で酒飲み勝負して……
へし切長谷部
へし切長谷部
勿論俺からも主のことを想い、言ってはいるんだが……どうにもな
灰峰
灰峰
(わぁー。まるでアル中の娘を心配する両親みたいな会話だな)
燭台切光忠
燭台切光忠
ちょっと二振とも、折角の歓迎会なんだから新刃君の前でそんな話しないの
灰峰
灰峰
(みっちゃんの方がお母さんみたいな言い方だったわ)
気になる話ではあったが、敢えてスルーして日本酒を一口飲んだ。この身体が酒に強いかどうかは知らないが、強い方であってほしい。
灰峰
灰峰
(てか、この後風呂入るから程々にしないとな)

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