第2話

非日常のはじまり
1,869
2021/01/03 06:52
男の怒号と、すすり泣く声で私は目が覚めた



なにが起きているのかわからず、部屋を出ると廊下に大柄の外国人の男が立っている

その足元には小さくうずくまり、震えている男の子

4歳くらいだろうか…


ここがどこか、とかアパートに私は一人暮らしだぞとか突っ込みどころは満載だが…この状況でするべき事はひとつだろう

大柄の男が部屋から出てきた私に気づく





「またお前か…。いつもこの連れ子を助けにきやがって、そういうところが母親に似ててムカつくんだよ…。」

『…?? よくわかんないけど、いい大人がすることじゃなくね…?』





母親に似てる…?連れ子??

え、私はこの男の子供にでもなったのか?

ふと、ガラスにうつる自分の姿が目に入る

年齢は7歳程のようで、ホワイトブロンドのサラサラの髪の毛に綺麗なグレーの瞳

何故か私の容姿の特徴は、目の前にいる大男にそっくりだった

状況が理解できないなか、頭を冴えさせたのは大男からの強烈なベルトむち打ちだった





「俺ァ今いらついてるだけだ、お前でもかまわない。」





いってぇ…このくそじじい!!

そう叫ぶと、父親に向かってじじいとはなんだ!とまた打たれる

私は男の子に、とりあえずどっか行けと目線をおくった

1番近い部屋に入っていく男の子を見届け、一安心する





「本当に生意気なガキだな…!」

『うっせえじじい、ガキ相手に暴力なんてクズすぎじゃん??』





黙って殴られてるだけなんて性にあわず、つい言い返してしまう

…なんで、どうしては考えても無意味かな…

私は今、あの男の子供なんだろう

そういえば最初に叩かれてた男の子は、連れ子と言われてたな…

今の私の…義弟??



…昨日も普通に仕事から帰り、お風呂に入って夕ご飯を食べた

いつもより早くベッドで横になり、スマホをいじりながら寝落ちしたと思う

そして当たり前のように自分の部屋で起きるはずなのに…





「ずっとムカつく目ぇしやがって…ちょっとはガキらしく泣けばいいものの…。

可愛げがねえからお前は母親に置いてかれたんだよ!

もういいわ、クソが…!!」





大男はそう吐き捨て、私を蹴っ飛ばしてどこかへいった

されてる時はそうでもなかったベルトのむち打ちだったが、ゆっくりと痛みがおそってきた

痛い、これは痛い


こんな痛みをあの子は4歳程で味わっているのか、本当にあの男は最低だな…

多分私の父親なんだろうけど





「…だ、大丈夫…?」





もう男がいなくなったと気づいたからか、さっきの男の子が部屋から出てきた

心配そうに私に話しかけてくれる





『私は全然大丈夫、君こそ怪我は?』

「…してない。」

『私の父親がごめんね、まだ小さいのに怖かったでしょ。』






半泣きの男の子は、ふるふると左右に顔をふる

いつもありがとう…とつぶやく

どうやら、私はいつもこの子を助けていたようだ

やっぱり私は優しいな、覚えてないけど





『あー…えーっと、叩かれてど忘れしちゃったんだけど名前…ってなんだっけ??』






…4歳ならこのくらいの嘘通用するだろう

案の定、なんの疑いもなく彼は名前を教えてくれた





「ハルノ。でもジョルノって呼ばれてる。」

『ジョルノ…私はあなた…だよね??』

「そうだよ、本当に大丈夫?」





綺麗な黒髪に緑の瞳

私と血が繋がってないのはあきらか

おそらく、ジョルノの母親と私の父親が再婚って感じかな…





『…なんかあったら私に言ってね、ご飯とかは食べれてる?』

「今日は…まだ。」

『今日まだって…空的にもう夕方じゃん。』





リビングってどこだっけ、とジョルノに聞くと案内してくれた

リビングにならなにか食べ物があると思ったからだ

冷蔵庫を開けたら怒られる、というジョルノを無視して食べ物を探す

…中身なんも入ってないし


でも机の上には、パンの入ったバスケットが置いてある





『まぁいっか、はいよ。』

「…勝手に食べたら、怒られるよ。」

『いーよ、飯よこさない大人が悪いんだから。私は2個食べよ。ジョルノも3個食べちゃえ。』





パンをとった私達は、急いで部屋に戻る

お腹が減っていたようで、ジョルノはペロリとパンをたいらげた





『にしても、6歳と4歳おいて家からいなくなる父親って…。母親もどこにいるんだろ。』

「マードレは、今日お買い物行ってる。」

『あー…そういう家庭ね!!』





その後、暗くなっても両親はどちらも帰ってこない

仕方ないので、ジョルノをお風呂に入れて歯磨きをさせた

彼の部屋にはベッドすらなかったので、私の部屋で寝かしつける





『…寝たかな、本当にどういう事よ私…。』

〝 本当ね、今日のあなたは生意気さが足らなかったわ〟

『いや色々考えてたから…っては!?』





なんか今、ジョルノがオネエ口調で話さなかった…!?

っていうかジョルノ起きてんの???

いや、寝息をたててぐっすり眠っている

でもこの部屋には私とジョルノしか…



見渡しても私達しか絶対に居ない





〝何よ、いつもお話してるじゃない。どうしたのよ突然…? 〟

『やっぱりこの部屋にオネエ、オネエがいる…!?』

〝いるわよ!?本当に私のこと忘れちゃったの?! 〟





会話もできてんだけど!?

驚きを通り越して冷静になり、耳をすまして声のする方向を見る

どうやら声は背後から聞こえてくる





〝こっちよ、こっち。あたなの真後ろ! 〟






…よく見ると、私の背中からすぅっとなにかが出ている事に気づく

幽霊…というより悪魔のような外見の男が、なんと私の体から出ていた

おっひさ〜とピースする悪魔に、私は開いた口が塞がらない



こんなにも非日常な1日があるだろうか…

プリ小説オーディオドラマ