夢side
横一列に頭を並べる私たち六人
観客席から感じる好奇を含んだ視線
しんと静まり返ったスタジアム
さあ準備は整った
小気味よく響いた空砲の音で、私たちは一斉に走り出した
まあまあな反応速度でスタートダッシュを切れた私は現在二位
少し前を走っているのは一位の中也
中也は運動神経がずば抜けているだけあってやはり早かった
相変わらず実況がうるさい
さっきの障害物競走では護衛側だったからまだいいものの
実況される側だとかなり邪魔だ
必死に頭の中から実況の声を追い出して走っているとコースの先に何かあることに気がついた
聞いてない
この競技って借り人するだけじゃないの!?
これじゃあもう借り人競争じゃなくて障害物競走じゃん!
もううるさすぎて音割れしている実況が聞こえてきたのと同時に
地面にトゲトゲとした撒菱が撒かれているのが見えた
少し先を走っている中也が異能力で地面に刺さっていた撒菱たちを持ち上げる
けれどご丁寧に自分のコースだけ
っていうかそもそも、
ダメだ、障害物に異能力の使用
聞かされていない特別ルールが多すぎる
後ろからは今の特別ルールを聞いて虎化した敦くんが猛スピードで追い上げて来ている
早くここを突破しなくては
でも私の異能力は撒菱には効かない
こうなったら…
ここまで培ってきた実況無視スキルを使って集中する
少し下がって助走をつけ、
そしてそのままの勢いで足を前へ前へと動かす
助走を付けていたタイムロスの間に敦くんはもうすぐそば後ろまで来ているはず
ここで差をつけておかないと後々しんどい
遠くから龍之介くんの声が聞こえる
とうとう一回きりの異能力を使ったらしい
彼は太宰に認めてもらいたいっていう執着心にも似た目標があるからなぁ
でも、もうお題のある机はすぐ目の前だ
二位を維持したまま机まで走り、お題の紙を適当に一枚めくる
そこに書いてあったのは…
お題 『 変わった手帳 』
Next♡120
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。