第58話

52話
5,173
2023/05/16 11:00
夢side



横一列に頭を並べる私たち六人



観客席から感じる好奇を含んだ視線



しんと静まり返ったスタジアム



さあ準備は整った
ミッドナイト
それじゃあ行くわよ、よーい、スタート!!

小気味よく響いた空砲の音で、私たちは一斉に走り出した

まあまあな反応速度でスタートダッシュを切れた私は現在二位



少し前を走っているのは一位の中也



中也は運動神経がずば抜けているだけあってやはり早かった
マイク
現在中原、三好、中島、宮沢、太宰、芥川の順だぁ!
まだまだ抜かすチャンスはあるぞ!

相変わらず実況がうるさい



さっきの障害物競走では護衛側だったからまだいいものの



実況される側だとかなり邪魔だ



必死に頭の中から実況の声を追い出して走っているとコースの先に何かあることに気がついた
マイク
中原、三好はもう気づいているとは思うが特別ルールでコースの途中に障害物があるぞ!
あなた
は!?

聞いてない



この競技って借り人するだけじゃないの!?



これじゃあもう借り人競争じゃなくて障害物競走じゃん!
マイク
先行者の行方を阻むもの、それは…
撒菱まきびしだぁぁ!!

もううるさすぎて音割れしている実況が聞こえてきたのと同時に



地面にトゲトゲとした撒菱が撒かれているのが見えた
中原 中也
こんなもん俺には効かねぇな
異能力「汚れつちつまつた悲しみに」

少し先を走っている中也が異能力で地面に刺さっていた撒菱たちを持ち上げる



けれどご丁寧に自分のコースだけ



っていうかそもそも、
あなた
異能力って使っていいの!?
マイク
異能力は使って大丈夫だぜぇぇ!!
ただし一回のみだぁぁ!
あなた
聞いてねぇよ!!

ダメだ、障害物に異能力の使用



聞かされていない特別ルールが多すぎる



後ろからは今の特別ルールを聞いて虎化した敦くんが猛スピードで追い上げて来ている



早くここを突破しなくては



でも私の異能力は撒菱には効かない



こうなったら…
あなた
八メートルぐらいならいけるか…
マイク
何をするつもりだ、三好!!

ここまで培ってきた実況無視スキルを使って集中する



少し下がって助走をつけ、
あなた
せーのッッ!
マイク
一っ飛びで撒菱ゾーンを越えたぁぁぁ!!

そしてそのままの勢いで足を前へ前へと動かす



助走を付けていたタイムロスの間に敦くんはもうすぐそば後ろまで来ているはず



ここで差をつけておかないと後々しんどい



芥川 龍之介
「羅生門」!!
マイク
おーっとここで芥川が異能力を使ってきたぁぁ!
マイク
って!どんだけ速いんだよ!?
もうこれはチートじゃねぇか!!

遠くから龍之介くんの声が聞こえる



とうとう一回きりの異能力を使ったらしい



彼は太宰に認めてもらいたいっていう執着心にも似た目標があるからなぁ



でも、もうお題のある机はすぐ目の前だ

二位を維持したまま机まで走り、お題の紙を適当に一枚めくる



そこに書いてあったのは…




お題 『 変わった手帳 』

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