第33話

story
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2018/06/12 08:06
卵とケチャップの良い香りが漂うリビングに


お風呂上がりの玲二くんは目を大きく見開き、


立ち尽くしていた。


そりゃ、そうだよね…。
お母さん
ほら、玲二くん。
そんな所に突っ立ってないで早く早く
雅 玲二(みやび れいじ)
…え、や、あ、はい
ハイテンションなお母さんに


背中を無理矢理押されながら


椅子に座らされる玲二くんに苦笑いしかできない。
お風呂に入るつもりで来たのに


ご飯までいつの間にか用意されているなんて。
それに…
佳純(かすみ)
ねぇ、玲二くんは彼女っているの?
目をキラッキラさせながら


玲二くんをガン見する佳純に


若干引きぎみであろう玲二くんは


私の方をキョロキョロと見ては


"助けて"って顔をする。
…無理だよ。


佳純が本気になったら、


誰にも止められやしないんだから。


この場をなんとか頑張って耐えて下さい。
雅 玲二(みやび れいじ)
…彼女はいないよ
佳純(かすみ)
へぇー。
お母さん
それより、
オムライスが冷めちゃう!
"食べよ食べよ"とお母さんが席についた所で


皆一斉に
"いただきまーす!"と大声を上げた。


玲二くんは挙動不審になりながらも


小さく、"いただきます"と言って


オムライスを口にした。
いつもよりもシャキンッとした背筋。


普段なら、絶対あぐらとかかいてそうなのに。


無理してるのかな?


やっぱり、緊張するよね…。


悪いことしちゃったなぁ。


と、軽く家に誘ったことを今更ながらに後悔する。
雅 玲二(みやび れいじ)
あ…う、上手い
小林優愛(こばやし ゆま)
…え?
雅 玲二(みやび れいじ)
このオムライス、
今まで食べた中で一番上手いです!
目を輝かせて珍しい物を見るかのように


オムライスに食い入る玲二くんは


また、新鮮で…。


やっぱり目が離せない。
お母さん
…フフッ。玲二くんのは優愛が作ったの
"ねっ"と答えを求められ、


うんうん、と軽く頷くと


玲二くんが
雅 玲二(みやび れいじ)
…お前、すげーな
なんて今までで一番の満面の笑みを


向けるもんだから


みるみるうちに自分の顔が赤くなるのが分かった。
雅 玲二(みやび れいじ)
…どした、お前。
顔あっか
小林優愛(こばやし ゆま)
ッ!う、うるさい!
変なこと言ってると
そのオムライス食べちゃうから!
何だか恥ずかしくなっちゃった。
ていうか、気づいてない!?


私の気持ちに


一ミリたりとも気づいてない様子!?


うそ、


私結構分かりやすいって言われるんですけど!?
それとも玲二くんって


意外と…鈍感??
学校では意地っ張りで上から目線で、


恋愛経験も豊富そうなのに…。
雅 玲二(みやび れいじ)
はぁ?!
これはもう俺が手つけたから俺のもんだろ
小林優愛(こばやし ゆま)
私が作ったオムライスですけど?
雅 玲二(みやび れいじ)
それはそうですけど、
お前がこの俺の為に作ってくれたオムライスだろ?
小林優愛(こばやし ゆま)
そうですけど?
別に無理して食べて貰わなくて結構ですけど
雅 玲二(みやび れいじ)
無理なんてしてねーよ。
好きだっつってんだよ
"好きだ"


その言葉を頭が認識したと同時に


ボンッ!と頭が破裂するかのような


衝撃が走った。



どうしよう。


顔がヤバイ!!


どうしよう、さすがにバレて…



ない。


目の前の玲二くんは


黙々と私になど目もくれず


オムライスを食べ続けている。
ただ、オムライスを好きだと言ってくれただけ。



私のことを好きだと言ったわけじゃない。


そう、何度も自分に言い聞かせた。

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