第17話

story
176
2018/06/08 08:02
加藤すず
ねぇ、優愛。
白王子とのデート、どうだったの?
小林優愛(こばやし ゆま)
うん
加藤すず
ねぇ、聞いてる?
小林優愛(こばやし ゆま)
うん
加藤すず
もぉ…!
小林優愛(こばやし ゆま)
いったー!?何!?
すずにいきなり頭をバシン!と叩かれ

痛い頭を擦りながら叫んだ。
加藤すず
白王子とのデートで何かあったの?
"デート以来、なんか上の空だけど"
なんて心配そうな顔して聞いてくるから。

私は、少しだけ俯いた。


当たってるのかもしれない。
私は確かに、優くんとデートして以来

ボーッと考え事をすることが多い。
別に特に優くんと何かあったわけじゃない。


けど、優くんとデートしたその日、


『優愛ちゃん。
ずっと好きだったんだ。
だから、僕と付き合ってくれないかな』



私は優くんに告白された。


嬉しかった。


嬉しかったはず…なのに。


何か、思ってたのと違ったというか。
優くんとのデートが楽しみで楽しみで


仕方なかったはずなのに、


いざデートしてみると何だか


楽しい!って感じるより先に


"緊張"が体中に湧き出てしまって…


何も考えられなくなってしまった。
小さい頃、助けてくれた優くんとは違う。


大人な優くんにドキドキしてる自分がいた。


それは…





私が優くんのことを心の底から好きだと


思っているから…?


なら何で私は優くんの告白に


すぐに答えることができなかったの?
小林優愛(こばやし ゆま)
…好きって何だろう
加藤すず
…相手のことを見てドキドキしたり、
一緒にいると楽しくて幸せでいーっぱいな気持ちのことを"好き"っていうんだと私は思うよ?
"私もよしくんといると幸せだもん♪"
って、笑って答えてくれた。



"相手のことを見てドキドキする。"
"一緒にいると楽しくて幸せ。"
それが…恋。



なのだとしたら…
私の今胸に宿るこの気持ちは何なのだろうか。
白王子と一緒にいれて楽しいはずなのに、


素直に喜べなくて…


ドキドキしていたはずなのに、


ふと気づけば…


彼と比べてしまう自分がいた。
それが何より不思議で仕方なかった。


ずっと、ずっと考えてても答えなんか


出てこなかった。
加藤すず
あ、噂をすれば白王子
そう呟いたすずに、


無意識に目を彼へと向けた。
加藤すず
相変わらずモテモテだねぇ。
優くんの周りにはたくさんの女の子たちがいて、


優くんは嫌な顔せずその女の子たちと


笑顔で話している。
楽しそうだなー。


優くんって誰にでも優しいし、


モテるんだよね。


何だか羨ましくてたまらないよ。


年下なのに、尊敬しちゃうほど。
加藤すず
優愛…
小林優愛(こばやし ゆま)
んー?
加藤すず
今、白王子にまとわりついてる女子たち見てどう思った?
えっ……?






笑顔で話す優くんを見て尊敬するなー。


楽しそうだなー。


って…。
加藤すず
胸がギューッて締め付けられた感じ?
そのすずの言葉に、


私はブンブンと頭をふった。


全然、そんな気持ちにはならなかった。
楽しそうだって見てて温かい気持ちになった。

ただそれだけ。
加藤すず
…あれは?
すずが指差す方向


そこには黒王子…玲二くんが立っていた。
周りには優くんと同様、


たくさんの女子。


けど優くんとは違って


不機嫌オーラが出てるのが見て分かる。


もうちょっと優しく接すること、


できないの?って思う。
と、同時に。


玲二くんの体に思いっきり抱きついた女子を見て



ズキッて。



ギューッて。



胸が締め付けられてるような感覚に陥った。
思わず、

自分の制服のリボンをギュッと握りしめる。



…嘘だ。



…そんなわけないよ。
私が好きなのは優くんであって…
加藤すず
恋は理屈じゃないよ?
頭じゃない、心で感じるものなの
"頭ではあの人が好きって思ってても、

心の中ではいつの間にかあの人で

いっぱいになる。そういうもんなんだよ"
すずのその言葉が


今の私の心に刺さった。
もしかしたら私は



思い込んでいたのかもしれない。



思い返せば、


わかるはずなのに。


どうしてこうも遠回りをしてしまうんだろう。




今日まで、

自分の本当の気持ちに

気づかないフリをしていたけど


もうやめよう。
明日、ちゃんと気持ちを伝えよう。
それから、ちゃんと謝ろう。

ごめんねって。


ありがとうって。
学校の帰り際、



なぜだか無性に会いたくなってしまった。




…彼に。

プリ小説オーディオドラマ