その後、
お母さんのお得意の恋愛トークが始まって
ようやくお母さんから解放された玲二くんは
きちんと礼儀正しく挨拶をして
帰る支度を始めた。
あたふたしている玲二くんの背中を押して、
二人同時に家を出た。
ーーーーーー
もう夜の8時を過ぎていて
周りはすっかり真っ暗になってしまっていて
住宅街の灯りがやけに綺麗にみえる。
そう言って
夜空に光る星を眺めている玲二くんは
今、ちゃんと私の隣にいるんだ。
今、しっかりと。
手を出せば、
すぐに届くくらい、近くにいるはずなのに、
二人の間にある大きな壁を壊せずにいるんだ。
思わぬ言葉に耳を疑った。
玲二くんが私に謝るなんて…。
…違うよ。
私の今、好きな人は、
優くんじゃない。
私の本当に好きな人は
今目の前にいるのに。
あなたなのに。
咄嗟に大声をあげてしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!