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第1話

#1
3,861
2019/11/04 11:20
「ちょっとキヨくんの家に動画撮ってきますね〜」

薄茶色の毛玉ひとつ無いセーター。黒のデニム。
(若作りしすぎたかなあ)
なんてことを思いながら、ガッチマンは妻と娘に手を振って家を出た。
電車を乗り継ぎ、我が家から10kmほど離れたキヨ家に急ぐ。

ピンポーン

「おお、ガッチさん一番乗りだよ〜」

チャイムを押すとドアから細身な男が爽やかな笑顔を覗かせた。
この男は実況者のキヨ。ガッチマンと共通の趣味を持つ少し歳の離れた友人である。

「今日はマ●オメーカーみんなで撮りたくてさ」
「任●堂はNGって言ったじゃん?俺マリオ下手くそだよ。」
「大丈夫、今日来るヤツらみーーんな下手くそ!!」
とへらへらした様子でキヨが言う。

こんなことを言えば普通の人ならカチンと来るのだが、不思議とカチンとこないのが彼の凄いところだ。

今日集まるメンバーの残りは確か
レトルト

それと
牛沢

レトルトはいいのだが、俺は数ヶ月前から「牛沢」の言動に違和感を覚え仕方が無いのだ。

集合時間から5分くらいが経ったぐらいだろうか。

「…んだよぉ、レトさんとうっしー遅刻じゃぁん、まだこねーよ」
ソファーでくつろぐキヨが駄々をこね始めた頃、

ピーンポーン
ガチャ


「キヨくんごめん、遅れちゃった」
「ガッチさんもう来てたの!はえぇ」
ようやく、レトルトと牛沢がキヨ家に到着した。

「もう俺がお前らのためにコース作ってんだよ!早くやろうぜ」
キヨが俺らを催促する。それを遮るように
「ほらほら君たちはまず手を洗いなさい。外から来たんだから。」
ガッチマンが遅刻組に声をかける。
「はーい…ガッチママン(ボソッ)」
レトルトが呟いた。
「誰がガッチママンだ‪w‪w‪w」

ぎゃっはははははと、盛大な笑いでキヨの部屋が埋め尽くされた。


日本トップ4と呼ばれる俺らは笑いの絶えないグループだった。
日本トップ4は一人たりとも欠けては俺にとっては物足りないグループだった。
俺はずっと4人で笑っていたかった。




だけなのに。



なんでうっしーは…


「ガッチさん、これ、飲んでよ。」

つづく

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