第113話

向き合いな
9,217
2020/05/19 09:04







大好きな人から好きって言ってもらえた




なのにその表情はそれでも付き合えんって言われとるみたいだった











なんとなくぼーっとしながら朝練のために学校に向かった














『侑、おはよう』










部室を開けると角名が着替えていた








昨日はあなたのことでいっぱいで全然寝付けなかった




だから今日1時間以上前なのに部室に着いた








多分稲荷崎に来て新記録だと思う



稲荷崎というか今まで1時間以上前に来たことなんてない








そんな俺より早く来た角名も俺と同じで寝付けなかったんやろうか





「おん」

「おはよ」





角名とは少し離れた場所でエナメルを置いて練習着を取りだした















最近角名と二人になることをなんとなく避けてたから気まづい











昨日のこともあるからもっと気まづい










『あ、侑』









沈黙の中


角名がいきなり俺を呼ぶ








「なんや」














『俺、振られたから気にしないで』













角名はそう言うと振り向きざまにクスッと笑った









『じゃあ別れたってことなん?』









そんな角名に俺が少々気まづく言うと








『ははは』







角名は何故か笑った
















『付き合ってるなんて嘘だよ、俺が江原を好きなのはこの際認めるけど』















『侑のこと好きでしょうがないから付き合えないんだって』











角名はいつの間にか着替えを終えて俺の前に座っている













『侑と付き合ったらめっちゃ妬まれそうだけどね、かわいそう』














『もしかしたらもうそんな風になってたりして?』




















『まぁちゃんと向き合いなよ。お似合いだと思うよ』














角名は俺に真剣な眼差しを送ってからちょっと切なそうに笑った











『侑、がんばれ』










角名は背中越しに俺に手を振って部室を出ていった






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