『待ってや』
侑くんに引き止められる
握られた腕を見てから侑くんの顔に目線を移す
侑くんは顔を俯いてた
『その・・・この前はごめんな』
頭を掻きながら徐々に私を見つめた
『全然喧しいなんて思っとらんよ』
『ただ俺が重かったんよな』
『良く考えればそうよな・・・!付き合ってもないやつに抱きしめられるのとか寂しいって言われんの気分悪いんよな!』
『不快な思いしてたんよな』
『今までごめんな』
『じゃあね』
侑くんはそう言うと私の前を通り過ぎて行った
『じゃあね』
その言葉が本当に最後みたいで
『侑く・・・』
堪えていた涙が止まらなかった
謝ることじゃないのに
本当は重いなんて微塵も思っていないのに
侑くんに好きとか寂しいとか言われるの大好きだったのに
侑くんがいなくなった教室で声を上げて泣いた
『なにしてんの』
その時後ろから声が聞こえた
後ろを振り向くと背の高い狐目の
『角名・・・』
角名が立っていた
『人の教室でなんで泣いてんの』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!